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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■いつか見殺しにされる予兆/DVD『助太刀屋助六』/DVD『真夜中まで』
 え? 予告編じゃ春風亭小朝ですごくよかったのに。ちゃんとクレジットまでされてたのに、なんで変更になったの?
 岸田さん、暗いし括舌も悪いし(前記のナレーションは耳コピーなんで、間違ってるかもしれない)、軽さが全く出せてない。どう考えてもミスキャストじゃない?

 しかも何がいけないって、肝心の主役がねえ……。
 真田広之、悪くはないよ。今時あれだけ動ける俳優さんっていないのは解るからね。けどやっぱり「軽さ」がない。この映画、1969年のテレビ時代劇『仇討ち・助太刀屋助六』のリメイクだそうだが、オリジナルではジェリー藤尾が演じていたとか。未見だけど(DVD化できないのかな?)そっちのほうが圧倒的に合ってたんじゃないかなあ。
 実際、こういうお調子者のキャラなら、昔だったら『ちゃっきり金太』あたりを見れば解る通り、エノケンが演じて然るべき役どころなんである(昔過ぎるって)。いや、少なくとも美男じゃマズいって判断はしておくべきでね、映像特典で竹中直人が「もっと出たかった」発言をしてるのは、「自分が助六を演じたかった」と読み変えられるだろう。でも竹中さんじゃ真田さんほど動けないからムリ。喜八組なら、かつての砂塚秀夫ならもうドンピシャの適役、けれどもうおトシだからなあ……。
 真田広之の父親を演じる仲代達矢もどうにも「重い」。これも役柄として強そうに見えちゃダメなんだよ、誠実ではあるけれど成り上がりでしかも好きな女ほったらかしてたような男なんだからさ。小林桂樹にやらせとけばいいのに、仲代さんをどこかにキャスティングしたかったための失敗だろうね。この映画に仲代さんの出番はもともとないよ。
 「映画の演出はキャスティングでその八割が決まる」というのは市川崑の名言だけれど、その点で行けば岡本喜八映画の最大の欠点はそのキャストだ。大部屋俳優に至るまで味のある役者の多かった二十年、三十年前に比べて、最近の岡本作品は「ほかに誰かいなかったのか」と言いたくなるキャストが目立つ。
 その中で、唯一、「このキャストはいいな」、と思ったのが助六に思いを寄せる棺桶屋の娘、タケノ(山本奈々)だったりするんだが、これは私がロリコンなせいではない(^o^)。池脇千鶴をちょっと泥臭くしたような(失礼)、『赤ひげ』の二木てるみにちょっと似た(古いね)風貌で、美少女然としてないところが時代劇向きでリアルだなあ、と思うわけ。岡本喜八の映画って、『独立愚連隊』でも『殺人狂時代』でもすぐに「荒唐無稽」と評されてたけど、設定は確かに非現実的でも人物描写は決していい加減じゃなかったのだ。現実の人間を見て御覧よ、まさしく「事実は小説よりも奇なり」で、「こんなやつ本当にいたのか」ってくらいキテレツでヘンなやつって見かけるじゃん。フツーに見える人間の中にだって狂気はいつだって潜んでる。そこを常に捉えて描いている喜八映画を指して、単純に荒唐無稽と言い捨ててしまう批評がいかにくだらないか。
 だからこそこの映画、どうしても「惜しい」って感覚がしてしまうんである。これが三十年前に作られてたらもっともっと面白いものになってたろうにねえ。
 あ、あと山下洋輔の音楽はいいですね。カット割りがだいぶ「甘く」なってるのを相当手助けしてます。

 
 DVD『真夜中まで』。
 真田広之二本立てだな(^o^)。敵が岸辺一徳ってとこまで同じ。五社協定があった昔ならいざ知らず、今こんなにキャスティングが似通っちゃうってのは、ホントに役者払底だし企画者のアタマの悪さも表してる……と言いたいところだけれど、こちらに関してはキャスティングの違和感は殆どなかった。和田誠監督のこれまでの『麻雀放浪記』『怪盗ルビィ』『怖がる人々』といった作品も佳作だったけれど、今回が一番の出来じゃないかな。
 その理由は何と言っても上映時間1時間50分と、映画内の時間経過を一致させたその演出によるだろう。冷静に考えれば、ジャズの公演と公演の合間に起こった麻薬密売事件を、単に事件に巻き込まれただけのジャズ・トランペッターがヒロインと一緒に解決しようとするって設定に無理はありまくりなんだけれど、この演劇的な同時性がその欠点を結構補っている。


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12月02日(月)
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