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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■多分今日は死にかけていた/映画『千年女優』/『ロード・トゥ・パーディション』
 語られる映画、実際に昔の日本映画をモデルにしてはいるのだけれど、これももうちょっと凝ってほしかった。ただずらずら並べるだけじゃなくて、時代の雰囲気を出してくれないとねえ。これも予算の関係でしかたないんだろうけれど、かつての日本映画の名作、ということになれば全部モノクロ画像にするくらいのことしてくれなきゃねえ。
 ついでだから、劇中劇、として描かれた藤原千代子主演映画の元ネタについてちょっと考察してみよう。
 『傷痍の勇士』や『君を慕いて』、すれ違いのドラマで停車場のシーンとなれば、こりゃもう『愛染かつら』である。だったらこのシーンでは絶対、テーマソング作って流さなきゃなあ。凝り方が足りないのはこんなとこなんである。満州へ渡る、というあたりは、『支那の夜』のイメージも混じってる感じだが、どちらかというと岡田嘉子の逃避行事件の影響があるように思える。つまり、「この映画はアレが元ネタ」と限定できるものばかりでなく、いくつかのイメージを合成してニセの映画を作ってるんである。
 『めぐり逢い』は「千代子巻き」の映像でもう『君の名は』だとわかる。
 『島原純情』は『祇園の姉妹(きょうだい)』、『雪の絶唱』は一連の新撰組映画(『月形半平太』も混じる)、『怪傑黒天狗』はもう『怪傑黒頭巾』と『鞍馬天狗』の合体、『千代子の忍法七変化』は一連の美空ひばりシリーズ、『学舎の春』は『二十四の瞳』や『青い山脈』の合体、『東京のマドンナ』はちょっと特定ができないが、高峰秀子がバスガイドをやってた映画があった気がする。『化石の家』は小林正樹の『化石』、『女の庭』は小津安次郎の一連の映画、印象としてはヒロインが結婚を迫られるから『晩春』がベースになってる感じか。『真夏の水平線』は多分『太陽の季節』や『狂った果実』といった太陽族映画(海辺のシーンしかないから限定できん)。『トラック大将』は説明いらないよな(^o^)。
 でもって、これはやりすぎだなあ、と思ったのが、『ギガラ』。いや、『ゴジラ』なんだけど、藤原千代子、芹沢博士の役演じてやんの(^_^;)。ヒロインじゃないのか。松竹映画系、日活映画系の作品が多い中で東宝が1本混じってくるとこにも違和感があるねえ。もっともそんなの感じるのって、40代より上の人間だけだと思うが。
 『紅の華』、女武者モノってなんかあったかなあ、と思ったんだが、なんとなく『クレヨンしんちゃん・雲黒斎の野望』や『戦国大合戦』にイメージが被っちゃうんだよなあ。まあ、戦いの中で誰かが犠牲になるってシチュエーション、あまりに多過ぎてこれは特定できない。
 『あやかしの城』は一番テーマに関わってくる話。と言っても、糸車を回す老婆が出てくれば、これはもう黒澤明の『蜘蛛巣城』である。となれば、老婆の正体も初手から見当がつく。案の定、『プリズナーNO.6』でした(^_^;)。全体、脚本が客へのブラフのかけかたがヘタなんだよなー。もっとも、殿に死なれた姫が城から助け出される、というエピソードは『秀頼と千姫』のもの。
 で、最後の出演作、『遊星Z』は、『アルマゲドン』……じゃなくて『妖星ゴラス』ね(^o^)。これが引退映画ってのが、脚本家にセンスなさ過ぎ。伝説の大女優どころか、節操のないヒロインって感じしかしないぞ。っつーか、40過ぎて特撮映画のヒロインやったりしないし、やらせねえって。……とかなんとか言ってるけど、原節子が『日本誕生』なんてのに出たって実例があるからなあ(-_-;)。一概に否定もできん。
 それにしても特撮が以上に凝ってるが、大正12(1923)年生まれのヒロインが、40代で引退したってことは、まさしく『ゴラス』のころじゃん。あんな精密なメカ特撮、作れてねえぞ。この辺の考証もいい加減なんである。やっぱり詰めが甘いなあ。

 一番ガックリきたのは、ラストの千代子のセリフ。「だって、私、あの人を追いかけてる私が好きなんだもの」。

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10月19日(土)
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