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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■若本規夫賛江/映画『サイン』/『エドワード・ゴーリーの世界』(濱中利信編・柴田元幸・江國香織)
 ネットで『The Wonderful World of Edward Gorey』というホームページを開設している濱中さんによる、日本初のゴーリー解説本。ゴーリーの作品紹介など、ホームページからの流用も多いが、やはり本として手に取って読めるというのは嬉しい。カラーページで様々なゴーリー・グッズを見られる楽しさ。Tシャツほしいなあ。
 ゴーリー作品の魅力をヒトコトで伝えるのは難しい。
 その諧謔、皮肉、悪意、狂気と混乱、嗜虐と被虐、暗さ、奇怪さ、ブラックユーモア、いくら言葉を尽くしても、ほんの一端しか語れていないように思う。しかし、その一端を分析し、集めて行くことで成り立っているのがこの本だ。そこにはこれまで見えてこなかったゴーリーの魅力が横溢している。
 ともかく、ゴーリーに関する情報なんて、ついこの間までは皆無に等しかったから、ともかくページを捲るたびに新情報が次々に飛びこんできて、ワクワクしてくるのだ。
 日本で最初にエドワード・ゴーリーを紹介したのは、かの植草甚一氏で。1976年12月、『ミステリマガジン』誌上に『オードリー・ゴアの遺産』が載ったのが最初だったとか。全っ然知らんかったわ。そうと知ってりゃ、こないだ東京に行ったときにミステリ文学資料館で、『MM』のバックナンバー探してみるんだった。まあ、この手の後悔はしょっちゅうすることではある。
 ゴーリーが日本通であった事実も読んでビックリである。『源氏物語』が愛読書で(サイデンステッカー訳だろうか。十数回読み返したというから本格的である)、成瀬巳喜男のファンって、渋すぎるぞ。今時の日本人でもそんなん、そうそういないって。確かに人間の不幸を冷徹に見つめる視点は、成瀬監督と共通するものがある。考えてみたら、一人の女が全く報われることなく一生を終える林芙美子原作の成瀬監督作『浮雲』などは、ゴーリーの『不幸な子供』そのまんまじゃないか。脳天気なハッピーエンドドラマがキライな向きには(私だが)こたえられない魅力なのだ。
 アメリカの『Mystery!』という番組(NHKで放送してた『シャーロック・ホームズ』や『ポワロ』、『ブラウン神父』や『ジキルとハイド』などのシリーズを放送していた枠だそうな。初期のホストは何とビンセント・プライス!)ではゴーリー氏はオープニング・アニメーションを担当していたとか。見てみてえー! ともかくゴーリーのミステリファンぶりはものすごいものだったらしく、特にアガサ・クリスティーはお気に入りで全作五回は読み返してたとか。「ミステリーは読み捨てるものではない、読み返すものだ」と言う氏の意見には激しく賛同。でも『X‐ファイル』の大ファンだったってのは少々頂けないが(^^)。
 柴田元幸、江國香織両氏との対談で濱中さんが明かしていることだが、ホームページにアクセスしてくる全世界のゴーリーファン、相当濃い人ばかりのようである。アメリカ人で「ゴーリーとガッチャマンのグッズは全部集める」と豪語している人がいるそうだが、どんな人間なんだ(^_^;)。そこまではいかなくとも、少なくとも日本で集められるゴーリー関係のものはこれから集めて行こうと思っている。ああ。またハマっちゃったものが増えて行くなあ……。
 てなこと言いながら、新刊の『敬虔な幼子』(ゴーリーにはときどき別名で作品を発表するクセがあって、これもその一つ。でも「エドワード・ゴーリー」のアナグラムになってるので本人だとすぐわかる。本作は「レジーラ・ダウディ」名義で発表された。このあたりもゴーリーがミステリファンである証拠)、まだ買ってないんだよなあ。っつーか近所の本屋じゃ見かけない。やっぱり天神の福家書店まで行かないとダメか。

10月14日(月)
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