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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■もうあのクニについて書くのはやめようかな/ドラマ『迷路荘の惨劇』/『よみきり▽もの』3巻(竹本泉)ほか
 日頃『ヒカ碁』を絶賛している私であるが、そのキャラクター設計に関しては必ずしも小畑さんのデザインセンスに全面的に両手を上げて賛成したいわけではない。少年マンガの派手さと、リアルなドラマ展開と、その両方を鑑みてキャラを設計することが並大抵のことでないことは解るが、例えばヒカルの髪がなんでメッシュ? という疑問は、連載当初から感じていた。マンガ連載のほうで、ヒカルがすっかりオトナな面持ちになってしまった今、あのメッシュはリアルな世界観にそぐわなくなっている。実写で誰か俳優にあの髪のまんまで演じさせたらどうなるかってことを考えてみたら、その違和感についてはご首肯いただけると思う。アキラだって、子供のころならともかく、今もあの髪型ってのはちょっとキツクないか。もっとも固定ファンが髪型の変更を許さないって事情もあるんだろうけど。
 倉田厚のデザインが秀逸だと言うのは、マンガチックでありながらあんな顔のやつが現実にもいそうだからだ(君の隣にもいないか?)。
 アニメの作画では横顔がやたら頬の線を強調しててブサイクになっていたが、「オレって天才?」と嘯く倣岸だがどこか憎めない木下恵介のようなキャラ(ルーツはどこいらにあるのかなあ。坂田三吉?)を見事に表現したキャラになってると思う。
 実は御器曽プロも私のお気に入り。ああいう顔の人もなんかそのへんにいそうなんだがなあ。妙に悪役ヅラな人。本人にはちょっと失礼なんだが。


 ドラマ、『女と愛とミステリー 横溝正史生誕百年記念 「金田一耕助ファイル 迷路荘の惨劇 京都祇園祭怪奇連続殺人! 呪われた地下道に消えた悪魔の復讐か!」』。
 相変わらずサスペンスドラマのサブタイトルってのはなんでこんなに(^_^;)。
 今更テレビドラマに映画の濃厚な味わいを期待しちゃいないが(たまに出来がいいのがあるからそれでも期待しちゃうんだけどさあ)、百年記念と銘打ったわりにはそこそこの出来。別に祇園祭、事件と関係ないじゃんかよ。そういう無意味な彩りが、ドラマをかえって貧弱にしてる作品ってやたら多いんだけど、テレビの製作者はタイアップが取れるからやっちゃうんだろうな。
 原作の『迷路荘の惨劇』は、「洞窟に逃げこんだ謎の怪人の復讐」という『八つ墓村』でも使われたモチーフが再び使用されているが、実のところ、このモチーフは横溝正史オリジナルとは言いがたい。
 洞窟内でのおっかけは江戸川乱歩の『孤島の鬼』でもっと戦慄的な筆致で描かれているし、謎の怪人についても『吸血鬼』や『緑衣の鬼』(これの原作は更にイーデン・フィルポッツの『赤毛のレドメイン家』だ)を換骨奪胎したもの。乱歩作品が必ずしも本格探偵小説というよりもその怪奇性、ロマンチシズムに重点をおいているのに対し、横溝正史は材料自体はアンチリアルでも、あくまで本格ミステリとしての骨格を持たせようと腐心した。それはやはり正史の乱歩に対するストレート過ぎる対抗意識の表れだと言っていい。何しろこの『迷路荘』、初め短編として発表されたのに留まらず、正史最晩年の長編として書き直されてまでいるのだから、その執念の深さは想像するに余りある。露骨なパクリ、という点では、ヒロインの名が『吸血鬼』と同じ倭文子である点にも注目したい。乱歩に対する敬意とかオマージュとか言うより、彼のものは細部に至るまで全部奪ってやるって正史の粘着質な性格が表れてると見るのはあながち穿ち過ぎではなかろう。
 従って、本編のヒロイン、篠崎(古館)倭文子は、乱歩の小説にしばしば登場する「狙われ」型の女性である。これに映画『RAMPO』で小山田静子を好演した羽田美智子を配役したのは製作者が乱歩と正史の関係を知った上でのことかもしれないが、残念ながら今回は感情過多なセリフのせいもあってか、薄っぺらな演技に終始していた。この人の場合、もともとセリフ廻しが余り上手くないんで黙って立たせといた方がいいんである。原作ではどこか浮世離れした昔風の儚げな雰囲気の女性なんで、羽田美智子、ふっくらし過ぎじゃん、ってのにも違和感を持った。78年の浜木綿子もちょっとな〜という感じだったけど、そんな女優さん、今時はいないから仕方ないかなあ。

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10月02日(水)
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