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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■ふつーの休日/『狼には気をつけて』4巻(遠藤淑子)/『民俗学者 八雲樹』2巻(金成陽三郎・山口譲司)ほか
 なのに遠藤さんは、父親を末期ガンの患者にしてしまった。
 息子を詐欺にかけるためにやってきたと見せかけて、本当は最後に息子と会いたかっただけ、という結末。……この結末に「救い」があるのかどうかと問われれば、「ある」と答えることはできるけれども、でもやはり「しこり」が残りはする。
 確かにしんみりする話も昔から描いてはいたけれど、それでも遠藤さんの真骨頂は「脳天気」だったように思う。涙を流すにしても、切ない涙じゃなかったんだけれど、これからこういう作品が増えていくのかなあ。 


 マンガ、金成陽三郎原作・山口譲司漫画『ミステリー民俗学者 八雲樹 かぐや姫殺人事件』2巻(集英社/ヤングジャンプコミックス・580円)。
 『竹取物語』をベースにしたミステリーと言われて真っ先に思いつくのは高木彬光の『月世界の女』。名作の誉れは高いけれど、小説としては面白いトリックでも、実は現実的にはちょっとムリがあるし、言っちゃなんだが「かぐや姫」をモチーフにしたってことを予めバラしてたら、先が読めちゃうのである。
 この『かぐや姫殺人事件』も、ログハウスのトリック自体は面白いけれど、ミスディレクションがヘタクソなので、犯人もトリックもバレバレである。……つーか、その程度のトリックなら何も門外漢の民俗学者に依頼しなくても、警察官がすぐに見破るんじゃないか? もっとも作者としては、今の刑事ってバカがすごく多くなってるから、こんなチャチなトリックも見破れないのだって皮肉のつもりでそう描いてるのかもしれないけれど。……いや、実際、刑事の顔がもう「無能」を絵に描いたような(絵だけど)ヒドイ顔でねえ(^o^)。
 もう一編の『蕗の葉の下の殺人者』、これもどこにムリがあるかはトリックに関わることだから書けない(-_-;)。まあ、警察がよっぽど無能だったら成功するかもしれないけれど、有能、とまではいかなくても、普通に常識的な感覚を持った刑事だったら、すぐ真相に気がつくトリックだってことくらいしか言えない。けど、それは全てのミステリーにも共通して言えることだしな。
 それはまだいいとして、天狗、かぐや姫と来て、今度は「コロボックル」がモチーフになってるんだけれど、「実はコロボックルは実在していた」ってオチはやめようよ。最後の最後のドンデン返しで、「実は本当の犯人は幽霊でした」なんていう、いわゆる「怪奇ミステリー」の手法の一つなんだけれど、これ、作者によっぽど力量がないと外すんだよ。高木彬光も『大東京四谷怪談』じゃ外してたし、松竹映画版の『八つ墓村』も、それで原作の論理性をオジャンにしてしまっていた。
 ……やっぱ、ミステリ作家に求められるのは「節度」だと思うんだが、どうか。

06月23日(日)
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