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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■やっぱりカネがあると肉/映画『ウォーターボーイズ』/映画『アイ・アム・サム』
 『白雪姫』中の「七人の小人」をモデルにしたと思しい、知恵遅れの仲間たちは裁判でサムに有利な証言をすることができない。しかし彼らは一人一人がどこかで日常生活に支障をきたす部分を持っていも、それを補いあうことでルーシーを立派に育ててきたのだ。それは「愛情」のひとことで括れるような単純なものではなく、もっと複雑な要素がそこにはあるはずだ。
 弁護士役のミシェル・ファイファーが無能にしか見えないのは、彼女自身がヒステリーに悩まされているからではない。彼らの中に愛情を越えてもなお人間としての尊厳を訴えることのできる「何か」を全く見出せていない点に理由がある。
 それはつまり、この映画の制作者たちが「妥協」した結果なのである。脚本の「放棄」だと言ってもいい。おかげで、物語はいわゆるありきたりというよりは逆に現実から目を背けた「『白痴』=純真無垢な心の持ち主」みたいな偽善的な方向にしか進んでいかなくなってしまった。そこのツメが甘かったのが、この映画のなんとも惜しいところだった。

 しかし、「演技」というレベルにおいては、この映画、世界でも最高のレベルに達していると言っていいだろう。
 サム役のショーン・ペンももちろんだが、何より信じられないほど豊かな演技を披露してくれたのは、ルーシーを演じた7歳の少女、ダコタ・ファニングちゃんだ。自分が父親よりも賢くなってしまう孤独感、けれどそれゆえに父親から何を受け継いで行けばいいかを学んでいく様子を、ほんのわずかな表情の動きで表現していく。……私ゃ、かつてのマコーレー・カルキンもハーレイ・ジョエル・オスメントくんもべつに「てんさい」とは思わなかったけれど、ダコタちゃんは天才だと言いたくなっちゃったね。結構穴のある設定なのにそれが気にならないのは、彼女の演技によるところが大きい。見て損はしないですよ、この映画。

 しげの評価は2本ともまあまあ。『ウォーターボーイズ』にしげが感情移入しないのは分らないでもない。あまり「男の子」に対して幻想持ってないものな、しげは。若い男のバカってのはあまり笑って許せないだろうし。
 いつもの如く、帰り道の車の中で、しげは「どこかへいこうか?」とか言い出す。
 「温泉にでも行くか?」と答えたら、しげ、なんだかクスクス笑っている。またどうせバカなことを考えてるんだろう、と思ったが、聞いてやらないのも悪いかと、一応聞いてみる。
 「何がおかしい?」
 「……ラブホと伊香保は似てるね」
 ……聞くんじゃなかった(-_-;)。

06月21日(金)
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