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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■新人さんの名前は?/『不幸な子供』(エドワード・ゴーリー)ほか
「……見せたのかよ、そいつ」
「ううん、そうじゃなくて『こんなのがある!』って、勝手に見たの」
「ヒデエな。人権侵害だな」
「エロビデオって、タイトルが面白いね。ほら、南野陽子の映画で『私を抱いて、そしてキスして』ってのがあったじゃない」
「ああ、あのエイズの映画」
「あのパロディでね、『私で抜いて、そして○○○○』……」
……まあ、外道な業界だからなあ。
「そりゃあ、独身男は仕方ないよ」
「でも、彼女いるんだよ、その人」
……まあ、若いってことなのだよ、それは。
テレビにニュース速報で「高橋尚子女子マラソン世界最高記録」のテロップが流れる。
もう30も近いってのに、たいしたもんだなあ。だいたい、たいていの選手がオリンピックのあとは期待の重圧に負けて記録を落としていくのに、そんなのを屁とも思っていない(本当は思ってるのかもしれないが、少なくともそうは見せていない)、これはやはりスゴイことだ。
まあ、CMでは最近ヘンな踊り踊ってるけど。
しげはやっぱりこういうニュースにも興味を示さない。昨日の長嶋引退にも無反応だったし、果たして世間の事件でしげの興味を引く出来事などあるのだろうか。
エドワード・ゴーリー/柴田元幸訳『不幸な子供/The Hapless Child』(河出書房新社・1050円)。
『ギャシュリークラムのちびっ子たち』『うろんな客』『優雅に叱責する自転車』に続く、ゴーリー絵本の日本語訳第4弾。
これはもう、私の大好きな作品なので、全文をご紹介しよう。
「勝手な引用は危ないんじゃないの?」なんてご注意を受けそうだけれど、絵本だし、批評目的なので、著作権侵害には当たるまい。
あるところに シャーロット・ソフィアという女の子がおりました。
シャーロットの両親は優しくて お金持ちでした。
シャーロットはお人形を持っていて ホーテンスと名づけておりました。
ある日、軍隊の大佐だったお父さまが、アフリカ行きを命ぜられました。
七か月後、原住民の謀反が起きて お父さまが殺された、と報せが届きました。
お母さまはやつれ衰え、やがて息を引きとりました。
ただ一人血のつながった叔父さまは、落ちてきた煉瓦に脳天を砕かれてしまいました。
シャーロット・ソフィアは一族の弁護士の手に委ねられました。
弁護士はただちに シャーロットを寄宿学校に入れました。
学校でシャーロットは 先生たちから してもいないことで 罰せられました。
ホーテンスはほかの生徒たちに 八つ裂きにされてしまいました。
昼のあいだシャーロット・ソフィアは できるだけ隠れておりました。
夜は眠らずに しくしく泣いておりました。
もう我慢できなくなり 夜が明けるのを待って 学校から逃げ出しました。
シャーロットはじきに気を失い 舗道に倒れました。
一人の男がやって来て 両親の写真が入ったロケットを奪っていきました。
別の男が反対方向からやって来て シャーロットを連れ去りました。
男はシャーロットを 卑しい場所に連れていきました。
そうして 飲んだくれのごろつきに売りとばしてしまいました。
シャーロット・ソフィアは 造花作りの内職をさせられました。
わずかな食べ残しと 水道の水で食いつなぎました。
ごろつきは時おり 幻覚に襲われました。
シャーロットはどんどん目が悪くなっていきました。
そうこうするうちに、実は生きていたお父さまが 帰国なさいました。
お父さまは毎日 シャーロットを探して 車で街をまわりました。
とうとう ごろつきが発狂しました。
もうほとんど目が見えなくなっていたシャーロット・ソフィアは、表に飛び出しました。
そしてたちまち 車に轢かれてしまいました。
お父さまは車を降りて 瀕死の子供を目にしました。
あまりの変わりように、お父さまは それが自分の娘とはわかりませんでした。
……これで終わりです。
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09月30日(日)
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