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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■夢の終わり/映画『王は踊る』ほか
 ともかく14世、なにかあるたびに楽隊引きつれてBGM代わりに音楽鳴らしてるのね。
 ベルサイユ宮殿建設予定地で、「ここに壮大な宮廷を!」と叫んで、ひときわ音楽が高まった途端、14世が沼にハマって泥まみれになる、なんてまるでコントだ。
 最高に笑ったのが、愛人とのベッドインの真っ最中にまでBGMを演奏させてること。しかもその演奏を指揮してるのが14世にホの字のリュリだから、彼がジェラシる表情がいじらしいやらおかしいやら。……しかし楽隊に見られてて、よくヤレるよな14世。

 公開は終わっちゃったけど、ビデオでも出たらどうぞご覧あれ、お勧めの一本です。でもなあ、ベルギー映画(性格にはベルギー・フランス・ドイツ合作)なんて、そうそう近所のレンタルビデオにゃならばないかもなあ。


 映画が終わったのは9時近く。
 しげ、何が気に入らないんだか、妙に機嫌が悪く、声をかけてもぶっきらぼうな受け答えしかしない。
 しかも勝手に脇道にそれて見知らぬ路地に入りこもうとするので、こちらも腹を立てて「どこに行くんだよ!」と怒鳴る。
 「遠回りしちゃいかん? そんなに早く帰りたいの?」なんて嘯くので、もう、これは相手にしちゃいられないと思って、しげを放って、いつもの通り道を先に帰る。明日も私は仕事があるのだぞ。
 それに、色弱で夜目の効かない私が、見知らぬ道を自転車で行くということがどれほど危険か、今までもう何十回も口を酸っぱくして説明しているのに、しげは一切記憶しようとしないのだ。私が何度、夜道で電柱やらガードレールやらにぶつかってコケたと思うのだ。
 しげは、自分が自動車の免許を取ろうとしているのは、山道を自転車で通う私が心配だから、と理由を説明しているが、そんなの信じられるか。だったらなぜわざわざ暗い道を選ぶか。
 結局しげは、自分の気分で「親切ぶりっ子」をしたいときだけ、優しげに見せてるだけで、相手を本気で気遣ったりしてるのではないのだ。
 しげが免許を取ったとしても、その車に同乗する気は私にはない。そっちのほうがよっぽど危険だ。

 ドアに鍵をかけて、遅れて帰宅したしげを外に締め出す。
 これくらい強硬なことをしないと、しげは決して謝らない。
 ようやく「ごめんなさい」と謝ったので部屋に入れるが、結局それも口先ばかりで、なぜ勝手に横道に入ろうとしたのかとか、どうして機嫌が悪かったのか、とか、いくら問い詰めても理由をきちんと説明しようとしない。

 入院して以来、しげには振りまわされっぱなしである。
 故意に嫌がらせをしているとしか思えないことも多々あったので、何度も叱りつけるのだが「反省する」と言うばかりで、実際に反省したような行動は全くとらない。
 相変わらず家事は全くしないし、物忘れをしないように気をつけようともしていない。
 「わざと叱られるまねをしてるのか?」と聞くと、「そうだ」と答える。
 「どういうことだ?」と畳みかけるように聞くと、「失敗すれば、叱られるって結果の予測がつくけど、反省したらその先の予測がつかないから不安になるの」と説明する。
 ……これはもう一種の自傷行為だ。それにつきあってたら、マジでこちらの身が持たない。私生活のフォローだけで私にはもう限界である。これで日曜休日まで劇団の練習に潰されていたら、いつ誰がウチの家事をやるというのか。

 しげ自身が性格を変えるなり、セルフコントロールできるようにならない限り、劇団の手伝いまでつきあってはいられない。
 しげも劇団内で意味不明なこと喋りまくってるのに、みんな甘やかして放ったらかしてるんだものなあ。
 直観と言うよりは思いこみだけで何の理論も根拠もない発言をいちいち尊重してやらねばならんほど、私は芝居について不真面目ではいられないのだ。好きであるからこそ、しげの演劇をナメてかかった態度に対して、私は私生活ほどに寛容ではいられないのである。

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09月07日(金)
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