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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■What is Okyuto?/『新暗行御史』(尹仁完・梁恵一)ほか
単行本を全巻買っているわけではなかったので、この二作、今まで読んでいなかったのだが、ようやく読めた。ブリブリ王国、結構原作に忠実に作られてたのだなあ。しんのすけとスンノケシ王子がそっくりという設定が今イチうまく生かせてないなあと思っていたのだが、原作でもそうだった(笑)。
短編は小さなギャグの積み重ねでうまく落とせているけど、長編は臼井さん、苦手だったんだねえ。
『雲黒斎』は設定のみを借りただけで、ほとんど原作無視の映画になっていた
のは、あのままじゃ映画として弱い、と監督が考えたせいだろうな。……戦うヒロインがやはりほしいところだしね。
どんでん返しの後のタイムパラドックス、更には巨大ロボット戦などは全部映画だけのオリジナル。ひろしが「SF初段」という設定も(笑)。
原作の弱いところをどう補完してあの傑作に仕立て上げていったか、その過程なんかも本郷みつる監督に聞いてみたいもんだ。
マンガ、酒井直行原作・田巻久雄作画『獣世紀ギルステイン』1巻(小学館・580円)。
『AMON』のデビルマンやデーモンのデザインを行った造型家の韮沢靖がギルステインほかの「躯殻獣」のデザインを担当。でも私はあまり韮沢さんのデザインには魅力を感じてないんだよねえ。マンガのキャラクターには単純な線の持つ魅力ってものがあるのであって、やたら細部に拘ってリアルにしたって、ゴテゴテするばかりで本当の迫力は出ないのである。
ギルステインも「ドタマ禿げててヒビ入ってるよ」としか思えないし。
実際の作画を担当してる田巻さん、山本貴嗣さんのアシストやってた人だよなあ。絵柄がよく似ている。ということはこの人も劇画村塾系かな? よく知らないけど。
北極の永久氷床の中から発見された未知の病原体、カドケウス・ウィルスは、一瞬にして宿主の体格を増大、怪物化させる。しかし、その「ギルステイン症」に感染するのは、15歳の少年少女に限られていた。政府は少年少女たちを施設に隔離し、ウィルスのメカニズムを探るため彼らを殺し合わせる……。
まあ、(『デビルマン』+『バトルロワイヤル』)÷2って感じだねえ。
謎のカギを握るのがウィルスと一緒に何万年も閉じ込められていた少女「サラ」なんだけど、これのクローンを作って……って『エヴァンゲリオン』も入ってるじゃん。
あまり寄せ集めでマンガ作るもんじゃないぞ、という気もするけれど、今のところそうつまらなくはない。掲載誌の『サンデーGX』、ハマって読めるマンガが意外に多いぞ。少なくとも『コミックバンチ』よりはずっと読み応えがあるよ。
マンガ、尹仁完(ユン・インワン)原作・梁恵一(ヤン・ギョンイル)作画『新暗行御史』(小学館・580円)1巻。
オビに井上雅彦絶賛、とあるけれど、なるほどこれは面白い。
韓国のマンガということで取っ付きにくいと感じる人もいるかもしれないが、ちゃんと右開きでフキダシも縦長の楕円、コマ割りも日本のマンガと同じで、読みづらさは全くない。
「暗行御史(あんぎょうおんし)」は「アメンオサ」と読むそうだ。皇帝の勅使のことで、韓国の「水戸黄門」みたいな役目を負っていたとか。それに作者は現代的なアレンジを施し、一種の陰陽師みたいなゴーストバスターに仕立て上げた。
暗行御史の「しるし」である「三馬牌」。それは悪を凝らす「幽幻兵士」を蘇えらせることができる。
この設定だけを聞くと、単純な勧善懲悪物語に見えるけれど、この暗行御史、結構ヒネクレ者で、自分が「正義の味方」みたいに思われるのが大嫌いなのである。虐げられた民衆が「いつか暗行御史が助けに来てくれる」なんて虫のいい希望を持ったりしているのも気に食わない。
で、助ける前に一言いうのだ。
「これから起こることはすべて偶然だ。だから二度とこんなことが起こるなんて思うなよ」
照れてんのか、お前は! ……水戸黄門と言うよりゃ木枯し紋次郎に近いかな。この辺は多分、作者の脚色だろうな。
特に第1話はどんでん返しもうまく効いていて傑作。
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08月23日(木)
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