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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■ミクシィ狂想曲/『ユート』3巻(ほったゆみ・河野慶/3巻)
しげがお菓子作りをした経験と言えば、毎年のバレンタインチョコ作りくらいのものだが、これもまあ、毎回「実物大パラソルチョコ」とか恐ろしいものを作ってくれるから、しげに「たまにはデザートにお菓子も作ってよ」なんて言う勇気はなかなか出ないのである。
ドラマ『相棒』第5話 「悪魔の囁き」。
先週からの続きの後編、自殺したシリアルキラー・村木重雄(小日向文世)の跡を継いで津人を犯したのは誰か、という展開だけれども、前編を見ていて「犯人がこいつだったら面白くないなあ」と思っていたやつが犯人だったので、ちょっと残念だった。
ミステリ初心者がよくやる失敗だけれども、意外な犯人を作ろうとするあまり、動機や展開に不自然さが生まれてしまうのである。
今回は、ダミーとなる犯人を魅力的に描いてしまったおかげで、真犯人が「小粒」に見えてしまったのだね。即ち、村木がもっと犯罪を続けたいと思うのならば、「あんな脆弱なやつ」を後継者に選ぶはずがないのである。
でもそれはミステリに対してかなり厳しい見方もしているわけで、例えば高木彬光の『刺青殺人事件』も真犯人はダミーの犯人よりもまるで人間的魅力に欠けていた。今回の後半のストーリーは、かなり『刺青殺人事件』に影響を受けている様子があるが、悪い点まで真似てしまった感がある。
とは言え、このダークな雰囲気作りは、『相棒』シリーズの中でも見応えがある一編である。村木が呟く「ウィン・パティオ」という謎の呪文、これがラストシーンまでその雰囲気を持続させるのに効果を上げている。アップを多用した画面作りも実にいい。、
重要なキャラクターとなった精神科医・内田美咲(奥貫薫)にはぜひ再登場してもらいたい。実際、こんなにひたむきな瞳で「悪の魅力」を語られたら、こいつが魔性の女だと分かっていても、男は惹かれちゃうよ(笑)。
マンガ、ほったゆみ原作・河野慶漫画『ユート』3巻(完結/集英社)。
これだけ面白いマンガの人気投票が低くて打ち切りってんだから、やっぱりジャンプシステムはオカシイと思ってしまうのだが、逆に「打ち切られた」という現象から、「この作品が『面白くない』と今の読者に判断された原因は何か」ということも考えないといけないと思うのである。
まず、ストーリー・設定においての問題点はなかったかどうか。スピードスケートというスポーツが珍しくて、読者に馴染みがなかった、という点は多少はあるかもしれないが、本質的な問題ではないと思う。ほったさんの前作『ヒカルの碁』だって、碁の打ち方の全く分からない読者にまで浸透していったのだ。要は演出次第である。
それよりも主人公がスピードスケートが特に盛んなわけでもない東京に引っ越してきたという当初の設定が、性急な読者には「物語の停滞」と映ったのではないだろうか。ユートの前には「スピードスケート(ロング)」ができないかもしれない逆境が次から次へと襲い掛かってくる。東京という「スケート不毛の地」(まさかこの設定が東京人の反発を買ったわけでもあるまい)でのショートの練習しかできない状況、父親の反対、監督の功名心、など、私などはその「リアルさ」に息を呑んでしまうのだが、まあ『ワンピース』などに比べればこれが「地味」と受け取られても仕方がないかとも思う。
以前の日記にも描いたかと思うが、絵に華がなかったことも大きいと思う。今巻、最初の設定画が紹介されているのだが、やや年齢を高めに描かれたキャラクターたち、こちらの方が今の絵柄よりずっと魅力的なのである。実際の作画に入ってからは、年齢を下げたことで、キャラクターの表情が単調になってしまった感がある。こういうキャラクターの深みを表現しなければならないドラマの場合、河野さんの絵はあっさりし過ぎていたのではないだろうか。
けれど正直な話、アンケート結果が低かったのは「組織票に負けただけ」という気がしてならない。最終話、これからの展開の名場面を列挙した『超光速ガルビオン』のような終わり方を見るにつけ、どこか他誌でもいいから続きを書いてくれたら、と思う。そのときこそ、『ユート』の真価が世に問われることになると思うのだが。
11月09日(水)
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