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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■コメとライスは別のもの/『アキバ署! AKIHABARA POLLICE-STATION』01(瀬尾浩史)
 警察官の凸凹コンビもの……と言ったらもうそれだけで食傷気味なほどにドラマでもマンガでもありふれている設定なのだけれど、タイトルにある通り、舞台を秋葉原にしている点がまず凡百の「コンビもの」と一線を画している。電脳とオタクの街を舞台にして、どんな犯罪が生まれ、どんな警官が必要とされるのか、それをシミュレーションしたのが本作、というわけだ。なるほど、日本でそういう「街の特殊性」を活用して刑事ドラマが作れるとしたら、魔界都市(笑)新宿を除けば、秋葉原に如くはないかもしれない。
 もちろん、秋葉原を舞台にするからには、作者は「電脳とオタク」に詳しくなければならないし、更にはそれを「電脳とオタクに詳しくない人々にも面白く伝える技術」にも長けていなければならないわけだが、その困難な条件を軽々とクリアしていることに舌を巻いた。
 そのためには、主人公がどれだけ魅力的であるかがポイントになってくるのだが、この二人のキャラクターの設定が見事に秋葉原という街にマッチして機能しているのである。
 方やMIT出身で情報通信局技術対策課の“元”ホープ、キャリア技官のメガネっ娘警部補・久遠あまね。
 方やヤンキー崩れ、機動隊崩れで未だに秋葉原のバンチョー(笑)という、ハイテクはからきしアウトのアナログ刑事・伊武一弥。
 物語は、「外神田警察署」に、「ハイテク犯罪相談室」が新設され、そこにあまねが「飛ばされて」赴任するところから始まる。あまねの「現場教育係」としてコンビを組まされたのが伊武なのだが、コンピューターなんて全く扱えず、「IT」を「DDT」とか「ライチー」とか言い間違える自分がどうして配属されたのか、その理由が本人には全く分からない。もちろんそこには、キャリアであるあまねが場末の警察署なんぞにトバされてきた「相応の事情」ってやつが大きく関わって来ているわけである。署長が伊武に告げる一言がイイ。「彼女を暴走させるな」。
 即ちあまねのスキルがハンパじゃないってことなんだね。一歩間違えれば、というよりもこれはもう「ハイテク版必殺!」と称してよいほどにあまねの性格は「目には目を、ハイテク犯罪にはハイテク犯罪を」って思想の持ち主なのである。まあ実際、現実の犯罪は警察の手に負えないほどに複雑化、ハイテク化が進んでいるわけで、それに対応しようってことになれば、あまねのようなスキルと「正義感」の持ち主にしてみれば、「非合法行為」に走るのも当然ってことになるのである。
キレイゴトが言いたいそこのキミ、あまねのこのセリフをちょっとじっくりと考えていただきたい。Hムービーをネット公開されてしまった女子高生のために、そのファイルをデリートするためのウイルスをばら撒いた後で、あまねは伊武に向かってこう叫ぶのである。
 「ニュースはあっという間にネットに浸透しますヨ。どうなると思います? それこそ何十万、何百万っていうユーザーが、あのムービーをダウンロードし始めるんです。それを警察が防げますか? 数十万件の令状を取ってムービーを回収しますか? そんなの無理じゃないですか!? セキュリティホールだらけなんですヨ、この国の法(コード)も! 社会(システム)も! それを使う人間も!! そんなのにただヤミクモに従うだけじゃ、救えないじゃないですか! 目の前にいる、たった一人の女の子の心だって」
 現実にこんな被害に遭っている女性は多分たくさんいるだろう。犯人を逮捕したところで、一度撒き散らされた画像が回収できるわけではない。逆に警察がおおっぴらに動くことで、そういった画像を「宣伝」してしまうことになりかねないのが「IT革命」とやらを経た日本の現状なのだ。
 警察や国が無力であることは「本当に」こう考える人々が必要になってくるということである。あまり他人事と笑ってられない事件をこのマンガは扱っているのである。

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11月08日(火)
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