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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■いいんだぜ/映画『オペレッタ狸御殿』
 正直に告白すれば、私は「君が鬱病で 分裂で 脅迫観念症で どんなキチガイでも」のところで、しげのことを思い浮かべて泣いてしまったのである。私がしげのことを「イカレてる」とか書くと、「自分の奥さんのことをそんなに悪く書くなんて」と文句を付けてくる人がたまにいるが、私はしげがイカレてることを隠さなきゃならないことだとは考えていないからこそ「イカレてる」とはっきり書くのである。しげがイカレていることが私たち夫婦の間で何の障碍にもなっていないのに、どうしてそれを秘匿したり「言い換え」たりする必要があるのだろうか?(まあ、しげが家事をしないのは困ったことなんだけど、それが原因で我々が別れたりするようなことにはならないので)

 常日頃、酔っ払いの悪口ばかり書いてるのに、アル中だったらもさんを賞賛するのは矛盾じゃないか、と仰る方もおられるかもしれないが、私ゃ確かに酒や酒飲みはキライだが、「人」が嫌いなわけではない。
 らもさんという人の何に感激しているかと言うと、普通、人は、立派になりたいとかマトモでありたいとか、言葉としての聞こえはいいが、つまりは人よりも頭一つだけでも「上」でありたいと思っているものなのに、そういう衒いが全くないどころか、“できるだけ人よりも低くありたい”と考え、かつ実行していたからなのだ。
 マトモな人にはこういうリクツは理解しがたいかもしれないが、らもさんは、「世の中のダメな人々を愛するために、自分が率先してダメになった」人である。酒もやった、薬もやった、人としてはどんどんダメになっていって、だからこそあれだけ人を好きになれた。馬鹿とののしる人はいるだろうが、そんな「上からものを言う人」には決して人を愛することの真実は見えてこないだろう。
 こんな豊かな人格をお持ちの人に、魅力を感じないではいられないのだ。

 もう一つ、特報で、後藤ひろひと作・松尾貴史主演、『BIG BIZ』『BIGGER BIZ』に続く第三弾完結編『BIGGEST BIZ 〜最後の決戦! ハドソン川を越えろ〜』の製作発表も。
 松尾貴史のモノマネとトリック・スターぶりを存分に発揮した、日本には珍しい「ギャグ」だけで「涙」や「感動」の要素がカケラもないこのシリーズ、1作ごとに設定も構成も展開もどんどんエスカレートしてきているので、これで完結となればいったいどんなことになるやら期待は大。
 これまでのキャストに加え、篠原ともえが初参加とか。この人が結構な「役者」であることは先刻承知なので、ナマで見られるとなればもう、女房を質に入れてでも見に行かずばなるまい(いや、ちゃんと一緒に行きますよ。言葉のアヤですって)。
 けれど、会場を見ると、これまでは一作目、二作目とも西鉄ホール、福岡での公演だったのが、北九州芸術劇場に変更されている。ああ、また北九州に「取られた」(泣)。もう、地方公演のある芝居で、見たいやつの大半はリバーウォークにばかり来やがるし。そりゃ、舞台の造りが違うから仕方がないんだけど。こないだの『シティーボーイズ』の舞台を見ても比較できるんだが、音響効果を考えた設計と言い、客席の傾斜と言い、東京公演の天王州アイルよりも北九州芸術劇嬢の方が頭一つ分くらい上なのである。
 福岡・博多は何してるんだ、という苛立ちの声を挙げるのもだんだん空しくなるくらい、九州演劇の中心地は確実に北九州に移ってしまっている。「演劇振興」を掲げた末吉北九州市長の努力が実ったと言えるんだろうなあ、儲かってはいないと思うけど。北九州演劇祭もすっかり定着しているし、これでまた旅費を少ない家計から捻り出してかなきゃならないのである。


 AMCキャナルシティで、映画『オペレッタ狸御殿』。
 脚本が『はれときどきぶた』ほかの浦沢義雄、監督が『ピストルオペラ』ほかの鈴木清順ということで、主演のちょっとオタクが入ってるオダギリジョーは「『ルパン三世』のコンビだ!」と狂喜したそうだが、別に『ルパン』を引き合いに出さなくても、この二人、もともと師匠と弟子の間柄なのである(兄弟子にやはり『ルパン』の脚本家・大和屋竺がいるね)。

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06月01日(水)
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