ID:10788
無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
[491661hit]

■またもや類友/『Mermaid Heaven(マーメイド・ヘヴン)』(長谷川裕一)
 温暖化で全ての文明が海中に沈んだ300年未来の地球。わずかに残った文明の遺産は、「海賊」たちの求めやまぬ「財宝」として、激しい争奪戦が繰り返されていた。コールドスリープから目覚めた21世紀の高校生・獅馬渡は、機械化帆船“大ぼら(ビッグフィッシュ)”号の船長・シェルビー・ハーヴァーライトに拾われる。彼女の目的は失われたコンピュータ技術を渡の力で解明し、“世界を変える力”を手に入れることだったが……。
 やっぱり長谷川マンガは「SF」だなあ、と感心させられるのは、財宝“水宝珠(アクアオーブ)”の正体の意外性だけではなく、なぜそんな財宝を必要とする「技術」が残されていたのか、そして、21世紀人である渡ならば、その「技術」を誰よりも欲していたであろうに、なぜそれを「放棄」したのか、その「発想の転換」にある。それがまさしく「センス・オブ・ワンダー」であり、スペキュレイティブ・フィクションとしての「SF」の醍醐味なのである。
 同じ「海賊」マンガでありながら、『ワンピース』がただのヤンキーマンガに堕してしまっているのは、既成概念を打破する驚きに欠けているからだ。長谷川さんは明らかに『ワンピース』を意識して本作を描いていて、300年を経て「海賊」の概念が「海の平和を守る」ものに変化している理由が、「日本のマンガの影響」という設定になっている。つまり『ワンピース』の「でたらめさ」を利用して、逆にこの作品の世界を「ありえるもの」としてリアルに描写しているのである。「嘘から出た真」というのもSFのモチーフの一つで、こういうディテールにまでSFが横溢しているのが長谷川作品にのめりこむファンが多いことの一因だろう。
 『ワンピース』に飽き足らない方にはお勧めのマンガであるが、残念ながら全一巻で続編はナシ。一般のファンが今ひとつ着かないのは、長谷川さんの絵柄が、現在の美少女萌えな傾向とはちょっと離れてるせいがあるのかもしれない。いや、ハザミとか充分かわいいと思うんですが(笑)。

04月07日(木)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る