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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■美しさは罪……何のことなんでしょう(^o^)
痺れを切らせて「今日は撮影はするの?」としげに聞いたら、「なに? やる気マンマン?」とからかわれた。私がせっついたのは、時間が経ってしまうと、「ヒゲ」が伸びてしまってマズイことになると思ったからである。実際、そう言ったのだが、「いいよ伸びたほうが」とか言い返されてしまったので、こいつはやっぱり肝心なところで芝居のセンスがねえなあ、とガックリした。笑いを取るための「写真」ではあるけれど、やりすぎるとかえって白ける。ギャグには「抑え」も必要だってことは、しげも気付いてないわけじゃないと思うのだが、ワルノリするとそのことを忘れてどんどんつまんなくなるのが悪い癖である。それって酔っぱらった中年オヤジの下品ギャグとレベル変わらんぞ。
人がマジメなときに限って、しげはこうしておちゃらけることが多い。だから「遊びでやってんじゃないんだよ!」としょっちゅう怒鳴られてしまう。まあ今回は怒鳴りはしなかったけれど、制作だし演出なんだから、のぼせあがって周囲が見えなくなるのは極力避けてもらいたい。
しようがないので、夕方までは本を読んだりして過ごす。
夕方、休憩に入る前になって、ようやく「撮影」の準備に。
今回の芝居、私は出演しないのだが、ある扮装をして「写真」で登場する予定なのである。どんな扮装なのかはまだ公演前なのでヒミツなのだが、あまり気味のいいものではないので、読者のみなさんは知りたがらないように。
メイクをしてくれた鴉丸嬢、「けいちんにメイクをする日が来るとは思わなかった」と溜め息をついていたが、そんなしみじみと言われたってなあ。これだって演技なんだから、やれと言われりゃ何でもやるがね。
意外と時間がかかって、仕上がりまで30分。眼鏡は外しているので、鏡を見せられてもどんな顔になっているかは全く分からない(裸眼だと0.01を切っているのである)。もっとも見えないほうがポーズを取るには度胸がつく。
ポーズを取った途端に、穂稀嬢、細川嬢、みんなこぞってバチバチと写真を撮りまくる。そんなん撮ってどうするんだと思うが、穂稀嬢、嬉々として「こんな珍しいもの、一生ものじゃないですか!」と言って笑っている。一生、保存しとくつもりか、こんなの。
しげは撮った写真をカトウ君にもメールで送っていたようだったが、こんなの見て病気が悪化しないかと心配である。少なくとも寝覚めが悪くなることだけは間違いないと思うが。
休憩、食事、風呂のあと、ようやく立ち稽古。
ノリの悪いセリフをカットしたり、言いやすい形に変えていくが、それでもなかなかテンポがよくならない。カトウ君の代理は其ノ他君が務めて、3人でのシーンはそれほど悪くないのだが、しげと鴉丸嬢の二人のシーンになると、途端に「かけあい」に齟齬が生じる。鴉丸嬢のセリフがまだよく入ってなくて間が空いてしまうのも原因なのだが、役自体、どあ捉えていいのか掴めていないらしいのである。よしひと嬢も「そのままでいいんだよ」とアドバイスするのだが、ドツボにハマッたのか、だんだん幼児化して身動きが取れなくなっていくのである。
一応、演出としての仕事を果たさにゃならんかと思い、形から入るのは難しそうだったので、まずは気持ちを作ってもらおうと考える。其ノ他君に鴉丸嬢の側に座ってもらい、「其ノ他君に優しくするつもりで手を動かしてみて」と指示する。いつもは無意識で行っているであろう行為を、気持ちと動きを一致させることで演技として意識化し再現できるようにすることを目的とした、演技の基本練習である。
ところが鴉丸嬢、逆に硬直して、全く動けなくなってしまった。もしかして照れくさくて動けなくなってしまったのか、いや、そんな殊勝な性格してたっけ、それともシモねたバンバンおっけーなフリして鴉丸嬢のココロはすこぶるおとめちっくであったのだろうか、と訝んでいたら、突然、鴉丸嬢、其ノ他君に向かって謝り出した。
「ごめんなさい! 今まで一度も大勢に『優しく』したことありませんでしたっ! 私、自分が楽しむことしか考えてませんっ!」
……全員大爆笑。
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11月14日(日)
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