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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■新作映画のことなど。
 気になるキャストは、京極堂こと中禅寺秋彦に堤真一。「知性が表現できる演技力の持ち主」というのが抜擢の理由だということだけれど、私ゃてっきり佐野史郎あたりがやるんじゃないかと思ってたんだけど、もうトシが行き過ぎてるか。まあ御先祖様が近藤正臣なら、堤さんというのも流れとしては悪くない感じである。京極堂の友人、作家の関口巽に「巻き込まれキャラクターが似合う」という理由で永瀬正敏。身もフタもないけれど、これくらい納得の行く理由もないね(^o^)。私立探偵・榎木津礼二郎には阿部寛、これまたアヤシさ大爆発。刑事の木場修太郎には宮迫博之、久遠寺涼子・梗子の2役を原田知世。うーん、年齢的にはちょっと苦しいけれども、あまりトシを感じさせない人ではあるし、うまく演じられれば、『時かけ』以来の代表作になるかも、という気はする。
 出来がどうなるか、ということはミステリーの映像化の場合、いつも気になることではあるけれども、小説をお読みになっている方はおわかりだろうが、これはそもそも「映像化不可能」なトリックである。小説の方ですら「インチキ」感を持つミステリーのわかんねえヤツもいるくらいだから、このトリックをそのまま映画にしてしまったら、絶対「なんじゃこりゃ?」と言い出すヤツが出てくるに決まってるのだ。しかも監督が実相寺昭雄と来れば、そのあたり何の考えもなしに撮っちゃうのは目に見えている(^o^)。
 つまり「ミステリー映画としては」全く期待はできないわけで、これはもう最初から「雰囲気」を味わうつもりで見にいきゃいいんでしょうね。

 さらにも一つ、『テニスの王子様』も映画化だそうで。うちのメンバーでも、約1名、狂喜しそうな人がいるけど、まあ狂喜して下さい。


 昨日、本を買った袋の中にチラシが入っていた。
 小説やエッセイなどに取り上げられた九州を取り上げた新聞記事を紹介するチラシである。作品は、野沢尚の『ラストソング』。福岡のライブハウスで人気を集め、ロックスターを目指して上京した若者たちの成功と挫折、別離を描き、本木雅弘、吉岡秀隆主演で1994年に映画化もされた。そのライブハウス「飛ぶ鳥」のモデルとなったのは、福岡天神の「照和」。チューリップや海援隊、甲斐バンド、長渕剛らはここで歌い、実力を磨いていった。野沢さんの筆は、店の雰囲気を「そこは熱気と言うより重力だった」と表現する。小説化、映画化を野沢さんに決意させたものは、まさにその「重力」だったのだろう。
 大なり小なり、野沢さんの書く脚本や小説には、何かを書きたい、表したいという欲求の裏に、何か「重いもの」に引きずられているような印象があった。それはデビュー作である城戸賞受賞作、『七人の侍』の少女版である『Vマドンナ大戦争』のころからそうだった。野沢さんの作品に登場する主人公たちは、自らの意志と世界とのギャップに苦しみ、傷つき、痛々しい姿を晒していた。
 最初期の脚本である『ステイゴールド』。川原由美子原作の、水源を求める少女たちの旅を描いたこの作品には、自殺した少女の想いをどう受けとめるかというモチーフがあった。最近作『名探偵コナン ベイカー街の亡霊』にもまた、全く同じモチーフが描かれる。人はなぜ自殺をするのか、そして残された人々はその痛ましい事実をどう受け入れていけばいいのか、野沢さんはそこに常に「明るい未来」を見出そうとしていたが、そのモチーフに何十年も引きずられていたこと自体、現実においては未来が何も見えなくなっていたのかもしれない。


 日記を書き終わってネットを開いて、訃報を知った。
 今日の午後2時半ごろ、野沢さんの事務所で、野沢さんが首をつって死亡しているのが発見された。遺書もあり、多分自殺だろうということである。内容がまだ公表されていないので自殺の理由については現段階ではまだわからない。享年44。

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06月28日(月)
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