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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■久しぶりのネット散策
 このあたりの論議ももう私は何十年も前に語り尽くしていて結論を出していることなので(だから、煽りと分かっていても、何かひとこと言いたくなる心情も理解できなくはない)、今更何か意見を言う気にもなれない。けれど、レスの一つに、「SFの話のできる友人に恵まれなかったので、そういう話のできる場があると、つい浅学を顧みず喋り出してしまう」旨の発言があって、ああ、やっぱり時代が違うんだなあと実感させられて淋しくなってしまった。私の学生時代と言ったら、周囲は「そういう先輩や友達」ばかりで、SFにしろミステリーにしろ「基礎教養」として読んでいなければならず、その手の話をしない日の方が少なかったくらいなのだが。私なんぞ、先輩の会話に何とか付いていこうとして、随分トンチンカンな発言をして恥をかいていたものだった。
 ともかく、オタクの輪が広がったとは言っても、彼らの大半は、やはりコミュニケーション不全の状態に陥っている。知識はあっても、ディベートの経験がないから、その知識を相手に「面白く伝える」術を殆ど知らない。相手を思いやる気持ちがないと言ってもいい。トリビアがネタだけの状態ではいっこうに興味を引かないのと同じ(だから濃い薄いはあまり関係ないのである)、あるいはオヤジギャグがシラケてしまうのと同じで、知識というものは、ナマのままでは決して他人の興味は引かない。「演出」というものが絶対に必要になってくるのである。

 ネットの、特にオタク系のサイトに参集する人たちの「痛さ」は、プロアマを問わず、何よりこの「会話不足」に原因があると思う。それが証拠に、表現のおかしさを具体的に指摘すると、たいていのオタクは怒り出すのである。言ってることが分らないから、こちらは「分かりたくて」質問するのである。別にバカにしたわけでもなんでもないから、本当は怒らなきゃならない理由なんて全くない。なのにどうして感情的になっちゃうかというと、会話不足で、日本語に不自由なものだから、こちらの発言の趣旨を汲み取れずに逆恨みしてしまっているのである。……別にそんな意図は全くないのに、こちらが意見を押し付けようとしていると思いこまれてしまったこともあったなあ。こうなると、もともとギクシャクしていた会話が、修復不可能なくらいに成立しなくなってしまう。少し冷静になって考えてみれば、こちらが人間関係を悪化させるために発言しているわけではないことくらい、見当がつきそうなものなのだが、でもその見当がつかないのが「痛いオタク」だってことなのだろう。
 判断力が停止してしまう、人の言ってることが理解できない、そのくせそれが自分のせいだとは考えない、どうしても冷静になれない、自分では気の利いたことを発言している気になっているが、実際にはいつまで経っても話術が洗練されていかない。そういう内容の発言が何十回何百回と繰り返されているのを見れば、これはもうオタクに関わっちゃ危険だと判断されても仕方がないだろう。
 ただ、オタクたちがそうなってしまったことに対しては、同情すべき点もないわけではない。オタクには、オタクであるというそれだけのことが原因で、周囲からいわれなき差別を受け偏見の目で見られ、結果的にそれが強い劣等感やトラウマとなって残ってしまった、という過去を持っている人が多い。その結果、「傷つきたくない」強迫観念が肥大してしまい、ちょっと批判されただけで勝手に自分がバカにされたという被害妄想に陥ってしまうのである。批判と中傷は全く別種のものであるのだが、そんな基本的なことも理解できないくらい、判断力を失ってしまうのだ。
 そこまでイッてしまえば、もう同情しても仕方がない。差別されたことがイタい行為の免罪符になるわけではないのである。SFが文壇から差別されているからと言って、文壇を差別し返せば、やってることは結局同じだということだ。そういう心理状態における発言は、ヨッパライの絡みと同じで、いやらしいばかりである。ヒガミでしかないものを、さもマトモな意見のように堂々と主張されても、受け手は困惑するしかないのであるが。……私が相手を心底バカだなあ、と思うのはこの時点になってであって、それ以前ではない。バカにされて怒る人はバカにされても仕方がないってことなんである。

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02月22日(日)
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