ID:10788
無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
[491684hit]
■水がまた来る/『さちことねこさま』1巻(唐沢なをき)
今年の夏はなんか一気にいろいろ来るなあ、そう言えば今年は、後厄だったなあ、厄除けなんて特にしなかったけどまさかそのせいかなあ、とか、普段は全く考えないことがアタマに浮かぶ。
とりあえず部屋に戻って、テレビを点けたのだが……。
映らない。
顔が蒼白になる。明らかにこの雷雨のせいなのだが、今まさにレイ・ハリーハウゼンの『世紀の謎・空飛ぶ円盤地球を襲撃す』がNHK−BS2で放映されていて、それを録画しながら見ようとしていたところだったのだ。
あああああ、雨の野郎めえええええ!
天に怒っても仕方がないので、怒りはやはり福岡市の市政に向かう。こないだの水害で、市は警戒サイレンをあちこちに設置すると発表していたのだが、今回もそれは間に合わなかったようだ。よしんば設置されたところで、鳴らすのが遅れればそれまでである。どの程度役に立つものだろうか。
父と姉が心配になったので、電話をかける。「なんや」と、父のいつものぶっきらぼうな声が聞こえて来る。
「そっちはどげんね? こっちはもう一階が水没しとうばってん」
「おう、店ん前は川になっとうぜ。こないだ溝に泥ば流しとうけん、水がはけんとたい」
暗に道の掃除をした私を非難しているのだが、かと言って、店の前にヘドロを放置しておくわけにもいかないだろう。リヤカーなんかで泥をどこかに運ぼうにも、そのリヤカー自体、持っていないのである。
生前の母は、自分の責任で何かしたことを、初めはたいして何も言わないで見過ごしてるのに、何かが起きた後になって、こんなふうにイヤミを言う父のクセを、ものすごく嫌っていた。父は70になろうとするこのトシになっても、その悪癖が治っていないのである。私もやや父のモノイイにムッとはするが、心配して電話をかけたのに口ゲンカになっても仕方がないので、そのままやり過ごすことにする。それにこういうイヤミグセ、父ほどではないが子である私にもしっかり伝わっている。父に向けた刃はそのまま私に返ってきてしまうのだ。
「どげんすると? また椅子とかブロックの上にあげるんね」
「どげんするかはまだわからん。最悪の場合はそげんしてシャッター閉めて帰るしかなかろうばってん、ぎりぎりまでここにおって様子ば見とく」
何かあれば呼んでくれ、と言って、電話を置く。幸い、それから10分ほどして雨は上がった。どうやら今年初めての、そして典型的な夕立だったようである。
マンガ、唐沢なをき『さちことねこさま』1巻(エンターブレイン/ビームコミックス・651円)。
オビに「唐沢なをき初(?)のシット・コム」とあるが、さて、そう名付けていいものかどうか確かに(?)だわな。まあ面白けりゃなんでもいいのである。
筋を書くのはめんどくさいんでオビの惹句をそのまんま引用。
「かわいいメガネっ娘と不思議なねこが大活躍!! 貧乏でいたいけで業の深いメガネっ娘・薄氷(うすらい)さちこ。彼女がイジメられると出現する“ねこさま”の正体とは!?」
まあ、これはネタバラシしても構うまいが、一見動物に見えるこの物体、「アタマノサキニアルモノ」という先祖代々の「業」が凝ったものなのである。普通は人の目には見えないはずなのに、とびきり業の深いさちこのそれはしっかり見えちゃうだけでなく、エサは食うわ人は襲うわ海苔は食うわしっことうんこをしまくるわネズミやヘビをおみやげにくれるわ、狼藉のし放題なのであった。
「シットコム」というだけあって、確かに設定が揺るがず、文法破壊もないが、そういうのは本当は「唐沢さんらしくない」マンガになるはずなんである。ところがいつもの唐沢さんのマンガと違和感がさしてないのは、やっぱり登場するキャラクターが全ていつもの粘着質でデンパなやつらばかりだからなんだな(^o^)。けど、これまで一度もアニメ化されたことのない唐沢作品の中で、これが一番アニメ化向きなんじゃないかなあ(個人的には『蒸気王』をアニメ化してほしいんだが)。唐沢なをきメジャー化計画で(それなりにマニア受けはしていようが)、どこか勇気のあるスタッフ(IGとかマッドハウスとか)、一本作ってみないか。
08月11日(月)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る