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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■新車の名前はまだない。/DVD『諫山節考』/『低俗霊DAYDREAM』5巻(奥瀬サキ・目黒三吉)ほか
 この映画はまさしく田中良夫の聞く“謎の言葉”たった一つで、見事にその「異世界」を作り上げている。幻想小説ではよく使われる手ではあるが(SFファンならすぐに、「ああ、つまり『馬の首』モノだね」と気づくだろう)、『世にも奇妙な物語』のスタッフあたりなら、臭い演出でだいなしにしてしまうところ
が、蛭子さんの演出は、田中の孤独を、たった一人だけこの宇宙に受け入れられなかった者として、切なく描いていく。メイキングで蛭子さんは「失敗した」を繰り返すが、この作劇技術は決して凡手ではない。自信を持って2作目、3作目を監督して構わないのではないか。

 蛭子さんのマンガを読んだことがある人なら、それが実際の人間によって演じられていることに、妙な違和感、奇妙さを感じるのではないかと思う。
 もともと蛭子さんのマンガのキャラクターは人間などではない。人間の情念が具現化された「もの」としか言いようがないものだ。それが肉体を持てば、これはもう「もののけ」になるしかない。ここに至って私はようやく蛭子さんが水木しげるの系譜に連なる人であることに気づいたのだ。……って当たり前だったんだよな、『ガロ』に描いてんだから。
 蛭子さんの描いた絵コンテもDVDには収録。これだけでも一つの立派なマンガである。実際の映像と見比べてみるのも面白かろう。


 マンガ、奥瀬サキ原作・目黒三吉漫画『低俗霊DAYDREAM』5巻(角川書店/角川コミックスエース・588円)。
 壊れたマンガ家と言われて真っ先に思い浮かぶのは冨樫義博だったりするが(^o^)、奥瀬サキも一時期から微妙な壊れ方をしてきている。新人だったころ、御本人は自分のマンガを本気で「面白い」と、自信を持っていたようだ。そして驚くべきことには、それは生意気な新人の思い上がりなどではなく、本当に面白かったのである。
 このマンガの前身で未完のままに終わっている『低俗霊狩り』は、不幸なことにマニアなマンガ雑誌『COMI−COMI』に連載されていた。奥瀬さんの面白さは、実は『ジャンプ』や『マガジン』でも通用するようなメジャーな面白さであったと私は思っている。「低俗霊」といういやらしげなものを扱いながら、エピソードごとのラストは、たいてい底抜けに明るかった。絵はいろんなとこからの寄せ集めで(当時は天野喜孝と少女マンガを合体させたような凄まじい絵であった)、お世辞にも上手いとは言えなかったが、このまま上達していけば、雑誌の看板を背負って立つくらいにはなれると思ってていたのだ。
 しかし、現実はご覧の通りの寡作作家、『コックリさんが通る』は中断したままだし、この久しぶりの『低俗霊』シリーズは原作のみの担当である。
 なんでこうなっちゃったかを分析していったらまたいつまで経っても書き終わらなくなっちゃうので(^_^;)、結論だけを乱暴にも断定しちゃうと、マニアなファンと、バカな編集者が付いたことが奥瀬さんを不幸な道に追い落としていったのだ。
 パイパン深小姫女王様、今巻はもう大サービスである。巻頭はカラーで露店風呂に使ってギリギリまでの御開帳だし、まあやっぱりナニがあんな風に食い込むのはとてもいいものです(^o^)。でも、昔はあった「明るさ」は、どんなにギャグを飛ばしてももうないんですねえ。
 オビにもあるけど、このマンガ、アニメ化決定ですって。エロアニメでもないのにモノホンの「女王様」がアニメに登場する時代になったのだねえ。これが奥瀬さんに活力を与えてくれるきっかけになればいいんだけど。


 マンガ、魔夜峰央『パタリロ!』76巻(白泉社/花とゆめコミックス・410円)。
 久しぶりに越後屋波多利郎が出てきたな。まあ、前に出て来た波多利郎と同一人物かどうかはわからんが。
 76巻も続くと昔の設定なんて忘れてることも多いだろうしね。そう作者本人もどこかで書いてたよ。
 遺影で登場のパタリロの父王、ヒギンズ三世、1巻登場時の崩御時の顔とは全然違うが、「年を取られてからはかなりガタガタに」の一言ですませている。きっとどんな顔だったか忘れた上に、1巻読み返すのが面倒臭かったに違いない(^o^)。

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08月08日(金)
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