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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■「日本人」という名の妄想/『少年名探偵 虹北恭助の新・新冒険』(はやみねかおる)
テレビはその結末を語っただけで、ゲストもたいしたコメントを付けずに終わってしまったが、ノンフィクションを著した吉岡忍氏は、数年後にカンティアを探し出してインタビューを試みている。吉岡氏の興味は「なぜ日本人になりすまそうと思ったのか」を問い質すことで「タイから見た日本」を浮かびあがらせよう、ということだったのだろうが、私の専らの興味は、「この子は自分のウソにどう始末をつけるつもりだったのだろうか」ということだった。どう考えても「いつかはバレる」ウソだということはわかっていたと思うのだが。
恐らくそれは違うのだろう。彼女は「自分が本当に日本大使の娘のような気になってきた」と語っている。彼女が一番初めに騙していたのは他人ではなく、自分だった。彼女はタイ人の日本人への憧れを利用して日本人になりすましたのだが、誰よりも日本に憧れていたのは、カンティア自身だったのだ。
この事件を考えるとき、日本人である我々はどんな感慨を抱くだろうか。そのように憧れられることに面映さを感じるものもいるだろうし、もっと強い、拒絶感を感じるものもいるだろう。
けれど、そう感じる日本人たちこそ、実は「日本人ごっこ」をしているとは言えないだろうか。つーか、アイデンティティってもの自体、ただの妄想って言えば妄想なんだからね。なんかまた、押井守的に夢と現実がどうのこうのって話になりそうだから、これ以上の感想は控えます(^o^)。
続けて、『新・夜逃げ屋本舗』第10話。
源氏(中村雅俊)は、不良少年の借金取りに追い込まれている中年の教師・宮島健作(山田辰夫)に出会う。ところがこの少年は、家出中の宮島の一人息子・友明(塚本高史)だった。
友明は、交通死亡事故を起こした彼の友人を、父親が警察に売ったと信じこんでいた。源氏は、宮島の夜逃げの方法を考える一方で、なんとか二人を仲直りさせようと奔走するが……。
見よう見ようと思いながら今まで見逃していたこのシリーズ、キャストが映画版と一新されてるのは残念だし、夜逃げのテクニックがあっさりしてるのもいささか拍子抜けだけれども、もともと「借金したって無責任に逃げちゃえばいいじゃん」というコンセプトが好きなので、細かいところに文句をつけようと思わない。できればまた映画版を作ってほしいと思っているくらいである。
しかし山田辰夫がこんな実直な教師を演じるようになったんだなあ。昔は不良少年「しか」、演じないような印象があったんだけど。
はやみねかおる『少年名探偵 虹北恭助の新・新冒険』(講談社ノベルス・777円)。
同時発売のもう一冊だけど、仕事が忙しかったんで、読むのに時間がかかってしまった。
『春色幻想』『殺鯉事件』『聖降誕祭』の三本立て。一応今回は恭助が三作とも登場するけど、やっぱり主役はカメラ屋の若旦那のような気がするのは私だけだろうか(^o^)。後ろの作品リストにもこれ、「虹北恭助」シリーズじゃなくて、「虹北商店街」シリーズって書かれてるものな。
マンガの少年探偵はたいていトシを取らないけれど、小説の場合はちゃんとみんなトシを取るのが一般的。不登校の恭助君も、年齢だけは15歳、ヒロインの野村響子ちゃんともども、本当なら中学三年生のはず。もちろん「本当なら」ってのは一般常識のワクから捉えた感覚的表現でしかないので、恭助君は小学校卒で正しい。
たまにしか虹北商店街に帰ってこない彼だけれど、どうやら故郷で暮らすことを決意したらしい。次巻からは「高校生編」ということだけれど、中学行ってなくて高校どうやって入れたのか、それが一番の謎かも。
『春色』はまあまあ、『殺鯉』は捻り過ぎ、『降誕』はムリがあるって出来だけれど、無意味でドロドロな殺人がないだけ読後感はいい。ただ、お話全部、「冒険」にはなってないよなあ(^_^;)。
06月18日(水)
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