ID:10788
無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
[491698hit]

■騙されるほうがねえ/『たったひとつの冴えたやりかた』(J・ティプトリー・Jr.)/『ENDZONE』2巻(えんどコイチ)ほか
 なぜ声優が構成作家に? そういう疑問を持つ人の方がかつては少なかった。アニメブーム以後にこの世界に入ってきた人たちと違って、自分たちが声優である前に役者であり、役者としてまず何をしなければならないか、ということを真剣に考えている人なら、「声優以外の活動」もごく自然の流れだからである。

 『ガンダム』シリーズも、『逆襲のシャア』にセイラさんが出てこないのはどう考えてもおかしいのである。富野監督は、イベントなどで「セイラさんは声優さんがボクを嫌っているので出ません」と冗談めかした発言をしていたが、実際にそうした部分もあったのではないか。
 井上さんのエピソードで、こんな話がある。
 『ガンダム』関係か何かのパーティで、どこぞの会社のおエライさんが、「どうして『ガンダム』はこんなに人気があるんでしょうかねえ」と井上さんに聞いたとき、井上さんは、「あなたは『ガンダム』を一本でも見たことがありますか? 見たことはないでしょう。見ていればなぜ『ガンダム』に人気があるかは分るはずだからです。何か仰りたいなら、ともかく一本でもいから、まず『ガンダム』を見てみてください」と啖呵を切ったという。
 ……カッコイイなあ(T-T)。
 役と役者を同一視する愚は避けたいと思いつつ、「セイラさん本人や!」という思いを打ち消すことができない。
 そんな井上さんだから、「たかがロボットアニメ」と、自作に対するあまりに自嘲気味な発言を繰り返す富野監督に対して(富野さんがそう言いたがる気持ちも理解できなくはないんだが)、井上さんが不満に近い思いを抱いていたであろうことも見当がつく。
 富野さん、どうして『逆シャア』をアムロとシャアとセイラさんの物語として描かなかったんだ。
 今更言っても詮無いことではあるのだが。

 『未来放浪ガルディーン』のアニメ企画も、火浦功がもちっと作家としてマトモだったら実現してたんだよなあ。塩沢さんも井上さんも亡くなった今となっては、仮に制作されることがあったとしても、全然別物になってしまう。火浦功、なんでちゃんと原作書かなかった。
 今更言っても詮無いことではあるのだが。

 セイラさん、ランちゃん以外にも、シェリル、香貫花、おそ松くん、天野邪子、ゲベルニッチなど、役は変われど聞いただけで「瑶さんだ」とすぐわかる個性のある声。そんな人が、どんどん少なくなっているように思う。
 惜しみても余りある思いが、汲めども尽きぬほどに流れてくるのだ。
 

 仕事帰りの晩飯、「王将」で牛モツラーメンと豚の天ぷら。
 ここも間を置いて行くと、いろいろ変わったメニューが増えている。
 料理が来るまでの間、例の「ウソ職業」を集めた本、クラフト・エヴィング商會の『じつは、わたくしこういうものです』をしげに「これ、面白いよ」と言って読ませてみたのだが、何ページか読んで、腹立たしそうに「読んだ」と言って、突き返してきた。
 「面白くなかった? こういうの好きかと思ったんだけど」
 「だって、ふざけとうやん!」
 「……何が?」
 「妖しいオヤジが『月光密売の方法は秘密です』とか言って、明かそうとせんもん!」
 「……何言ってんの? 明かそうったって明かしようがないやん」
 「なんで?」
 「できるわけないじゃん!」
 「だって、ここに『月光密売してます』って書いてるじゃん!」
 「……おまえ、もしかして、この本に載ってる職業がホントにあると思ってる?」
 「違うと!?」
 「『月光』なんて、どうやって密売するんだよ! ウソだってすぐわかるだろ!?」
 「だって、写真で杯持ってるじゃん! 何か秘伝のワザがあるのかなって思って……」
 「『一瞬にして、地球の裏側の夜のところから、表側の昼のところまで月光を運んでくる』って、できるわけないじゃん……。これは『ウソを楽しむ』本なんだからさあ、少しは気づけよ」
 「だってオレが騙されやすいの知っとろ? エロさんとこの『銀河パトロールのジョンさん』にだって騙されたんだから!」
 だからなあ、エロさんには誰も読者を騙そうなんて意図はないんだって。勝手に騙されたのはおまえだろうに。

[5]続きを読む

03月04日(火)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る