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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■なんでも食うよ/『ブラックジャックによろしく』4巻(佐藤秀峰)/『プリズム』(貫井徳郎)ほか
 扱われている題材に惑わされてしまったが、「感動の仕掛け」がどうなってるかってことだけに注目すれば、このマンガ、そんなに出来のいいマンガだとは言えなくなる。

 「問題」を語るのはいい。作者も、恐らくは真剣に取材をし、このマンガを描いているのだろう。作者は読者に切実な問題を突きつけている。「生まれた子供に障碍があることを知ったら、親としてあなたはどうしますか?」
 こういった質問を突きつけられれば、ガキはともかく、とりあえずマットウに生きてるオトナなら真剣になって考える。
 果たして、自分はその子を育てられるだろうか。
 差別だらけの世の中に子供を放りこんで、その責任が取れるのだろうか。
 いや、たとえどんなに子供が苦しんでも、やはり親としてその子をこの手で抱きしめたい、それは親のエゴなのだろうか。
 思いは錯綜し、答えは容易に出ない。
 そんな、答えが簡単に出せるとも言えない状況に読者を追いこんでおいて、このマンガが何を描いたか。
 “生まれてくる新生児に意志があり、自らの命を死にかけた双子の兄弟に分け与える”という“ファンタジー”である。
 「リアルなマンガ」を読んでいた気になっていた人は、ここでコケちゃったんではないか。いや、実際に障碍を持つ子供の親である人で、このシーンに激怒した人もいたんじゃないかと勝手な想像もしたくなるくらいにこの「演出」はヒドイ。
 赤ん坊だって1個の人間である。それは事実だ。
 しかし、『ベイビートーク』じゃあるまいし、彼らにオトナ並の意志・判断力があるかのように読者に錯覚させようというのは「詐欺」でしかない。
 子供に「意志がない」からこそ、親はその子を育てるべきか否か迷うのではないか。赤ん坊が「障碍があっても生きたいよ」という意志を持っていると分っていたら、それを見殺しにする親がいるものか。
 こういう作者自身のファンタジーを読者に無条件に押しつけるような演出は、私は大嫌いである。こんなふざけたマンガ、読まんでもよろしい。

 なんだかなあ、何かに似てるよなあ、この演出、と考えていて思い当たったのが「つかこうへい」。登場人物がやたらと眉間にシワ寄せたり絶叫したり、ひところはそんなんばっかりやってたもんな。絶叫系の演出って、私は好きじゃなかったんだな。 
 

 貫井徳郎『プリズム』(創元推理文庫・672円)。
 帯に「『慟哭』の作者が放つ究極の推理ゲーム」とか書いてるけど、なかなかよく出来たアイデア小説ではあるけれど、誇大広告はよくないな。基本アイデアの先行作は、作者があとがきで紹介しているものの他にもいくつもある。
 小学校の女性教師が自宅で死体となって発見されるが、その真相を4人の人間が全4章の各章で4通りの推理を披露して見せる、というのがミソ。
 ……なんだけれど、目次を見ちゃうとそのトリックがバレてしまうという珍しい作品。まあフェアプレイではあるけれど、もう少しネタ隠しした方がよかったんじゃないかなあ。おかげで、2章読み終わった時点で「もしかしてこれって……ってこと?」って思ったけど、かえってまさかそんな単純な結末にはしないよなあ、と混乱しちゃったよ。
 各章の登場人物が語る被害者の「真の」姿ってのが全然違ってるってのも、よくあるアイデアだし、解説氏が誉めるほどではない。こないだ見た『You are the Top』も同じアイデアだったしね。
 『慟哭』、評判が高いんで読んでみようかと思ってたんだけど、『プリズム』がこの程度だと、あまり過剰な期待は抱かない方がいいかもなあ。(2003.2.21)

01月30日(木)
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