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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■ミスキャストの楽しみ方/『耳のこり』(ナンシー関)

 『新世紀エヴァンゲリオン』のDVDがリニューアルされることになったとか。ガイナックスのホームページによると、「最新のデジタル技術を使い、10ヶ月に及ぶリマスター作業により、 画質が飛躍的に向上、さらに音声も5.1chのサラウンドへ」ということであるから、特に新作製作、というわけではない模様。
 未だに『エヴァ』で食わなきゃならんのかなあ、意外と新婚生活でモノイリが多くて困ってるのか庵野監督、と勝手に邪推しちゃってるが、『ラブ&ポップ』『式日』と、どんどんマイナーな方に進んで行ってる監督の、これは方向修正かもしれない。ガイナックス自体も久しく大ヒットってのがないし、次の企画のための資金集めとしてリニューアル版を庵野監督に依頼したって事情もあるのかもね。これも邪推。
 もっとも、ファンの間に冷ややかな反応は多いんじゃないかと思う。テレビシリーズでマクガフィン(客の気を引くもの。ヒッチコックの造語だけれど、ハッタリやコケオドシと考えてもらってもいいかな)撒き散らしたあげくのシメが映画版ラストの「気持ち悪い」だったものなあ。あのとき怒り狂ったファンは今回のリニューアル版に関しても「ケッ」てな見方するんじゃないか。誰とは言わんが、「エヴァはもういい」と嘆息混じりに言ってた人も知ってるし。
 でも、あのとき別に怒りもせず、かと言って絶対信奉者にもならず、ただフツーに一アニメ作品として『エヴァ』を楽しんでいた私から見れば、リニューアル版が出ることについて別に文句もない。『ヤマト』や『ガンダム』の続編を作るのとは意味合いが違うんだから。それともかつてのファンは、これが続編製作の伏線と考えて怒り出すのかな? 続はねえよ、インサイドストーリーの可能性ならなくもないが。アレの続編作ろうと思ったら、『バイオレンス・ジャック』方式しかないって(^_^;)。
 ごく冷静に考えたら、『エヴァ』はセルアニメのデジタル化やCGアニメがフツーになる直前の、手描きアニメ最後のヒット作だったのである。それをリニューアルすることにどんな意味があるのか、それを確かめるためにもこのプロジェクト、期待して悪いことはない。未だに『エヴァ』と聞いただけで、まるでかつての古傷に触れられたかのように過剰反応してしまう方が恥ずかしくはないかな。
 唐沢俊一さんも何かで語っていたが、あれは単純なマクガフィンで成り立ってたアニメなんで、謎解き遊びをあくまで「ごっこ」として楽しむのならばともかく、SFアニメのエポックのように過大評価するのは、鑑賞の仕方としては稚拙に過ぎるのである。あの騒動のおかげで、いいトシしたオタクの鑑賞眼もたいしたこたあない、それどころか、ロクにアニメも映画も見てないってことが露呈してしまった。確かに、クソつまらん美少女&ロボットアニメしか見てなきゃ、映画を見る目なんか育ちゃしないわな。
 と同時に、「信者」作るのって簡単なんだなあ、とも思った。もちろん、そういう信者を作ることが庵野監督以下、ガイナックススタッフの本意でなかったことは明らかなので、ああいう客をすっ転ばすような最終回を作ったわけなんである。
 だから、言っちゃ悪いけど、あのラストに腹を立てた人はただのマヌケなんである。マクガフィンにもともと「正解」なんてものはないんで、そこに深遠な何かを見出そうとしても、そりゃ、「ご苦労様」としか言いようがない。
 私もあの騒動で気の狂った人に関わっちまったことはあるんで、ここでまたその手の人たちを刺激するようなことを書いちゃうのは避けた方がいいんだろうが、私も別の意味でバカだからさ(^o^)。未だに腹立ててる人見てると、いい加減、自分のバカ認めて、も少し映画見ろよ、でないとほかの作品に似たようなハマり方してまた「裏切られたあ!」とか叫ぶことになるぜ? と言いたいのである。あのとき腹を立てたってことはさ、自分が実は「ものにはたくさんの表現の仕方がある」っていうことを知らない、偏狭で自己中心的かつ差別的な価値観しか持ってなかったってことなんだから。周りにそんなのがウジャウジャいたら、わしゃ鬱陶しいんだよ。

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12月11日(水)
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