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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■癒してくれなくていいってば/映画『怪盗ジゴマ 音楽編』/『夏のロケット』(川端裕人)ほか
 実際に死にかけたら、私ゃ根性ナシだから、ホントに「し、死にたくねえよう、た、助けてくれよう」とか言って慌てふためくかもしれないけれども、そのときゃそのときで「みっともねえなあ」と蔑んで突き離して「勝手に死ねば?」とか言って頂ければいいのである。どんな形であれ、他人に関わろうとする行為には、「甘え」が生じるのだ。「甘え」をムリに受け容れなくたっていいでしょう。
 
 私なんかより、しげの方がよっぽど地獄を見てきている。
 しげのすごいところは、話を聞くだに「そんな経験したら生きちゃおれんわ」と思うようなことでも、サラリと受け流すというか、場合によっては忘れようとしてホントに忘れてしまっていることだ。別に偉いわけではないどころか、ハッキリ言ってバカなんだけれども、自分の不幸に執着してる人間よりはよっぽどマシだ。
 しげもまた、かつて「かわいそう」と言われたことが何度もあったそうであるが、もちろんしげは少しも喜びはしなかった。そんなこと言ってたやつにしげの心が理解できるはずもないし、実のところ本気で「かわいそう」なんて思ってたかどうかもアヤシイ。
 全く、世間の人々はどうしてああも平気で病人や身障者に対して「かわいそう」とか「お気持ち分ります」とか言ってしまえるのかね。テレパスかお前は。分るはずもないことを簡単に口にできることに、偽善と相手に対する優越感と差別意識が含まれていることに気付かんのか。ほかに言うコトバがないから、気付いててもあえて言ってるとしたら、よっぽどアンタらのほうがココロの不自由な人だよ。かわいそうだね同情しちゃうね。
 ……ね、「かわいそう」って、実質的な「拒絶」でしょ?


 そんな埒もないことを車の中でぼんやり考えていたら、しげが、「どうしたと?」と聞いてくる。
 しげは私が考え事をしていると必ず声をかけてくるが、考えてるのはたいていはこんな取りとめもない「よしなしごと」だし、聞かれたときには相当頭の中で未整理な考えが乱舞している状態になっているので、返事のしようがないのだ。
 それを愛想がないとか嫌ってるとか言われてもこっちが困る。
 で、今度はこちらが「メシはどうする?」と聞くと、「どうしよっか?」と聞き返してくるのだ。質問に対して質問で返されたんだから、自分では意見がないのかと思って、じゃあ、『すきや』にしようか」と言うと、不満そうな顔をして「アンタだけ行きぃ、オレは行かんから」と言う。
 「なんだよ、文句つけるんなら最初から聞くなよ」
 「オレ、言ったよ、『どうしよっか? 王将?』って」
 「聞こえてねーよ。『王将』がいいなら、『どうしよっか』なんて言う必要ないじゃん。最初から『王将』に行きたいって素直に言えよ。テキトーな日本語使うな」
 日記にも「いい加減『王将』に飽きた」みたいなこと書いてたから、しげも言葉を濁したのかもしれないけれど、言葉を濁そうが、「ここに行く!」と決めたら、しげは私の意見なんか聞きゃしないのである。
 私もそれが分ってるから、食事をどこでするかなんて主張、日頃はしていないんである。そんな態度でエスコートだけはしてほしいってのは、思いあがりも甚だしい。頑固なくせに優柔不断な態度を取るって、支離滅裂じゃんかよ。
 ……で、しげが車を乗り入れたのは「すきや」でなくて「王将」。
 ほら、私に聞く意味なかったじゃん。
 昨日、急にラーメンを食いたくなったしげ、いつものなんとかセットのほかに更にラーメンを頼む。「食い切れねえだろう」と止めるが、ヤケになってるしげ、口に目いっぱいコメツブを詰めこんで、グチャグチャ小汚く食っている。……そんな食い方したって美味くもなんともないと思うが。いつもいつも思うことだが、ヒステリー起こしたって自分が損するだけだとわかってるのに、どうしてこう、自分のコントロールができなくなるのかなあ。


 『クレヨンしんちゃん』の映画版に飢えるあまり(シンエイ動画、早くDVD出せ)、LDで『ヘンダーランドの大冒険』を見返す。

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06月20日(木)
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