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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■「思春期」という名の汚泥/『サブカルチャー反戦論』(大塚英志)ほか……“NEW”!
 だから、「そういう『自分に酔ってる』って切り取り方をする必要はないんじゃないかな。確かにそういう面もあるだろうけれど、『悩み』をどう解決するかってことを、完全に自己完結させることだって、できることじゃないんじゃないかな」なんてことを話す。
 中学三年生にこんな言葉遣いは少々難しかったかもしれないが、それを理解できるだけの能力がこの子にはあるんじゃないかな、と期待したのだ。
 反応は「はあ、そんなもんですかね」だったけど。


 大塚英志『サブカルチャー反戦論』(角川書店・1155円)。
 まず、この単行本のモトの掲載誌がどこか、ということから押さえておく必要があるだろう。
 『NEWTYPE』である。『ザ・スニーカー』である。
 そうですよ、あのオタク系アニメ情報誌の、小説誌の、です。
 『多重人格探偵サイコ』の連載のフリをして、さりげなく読者に提示されちゃった原稿。それがこの『反戦論』。
 この事実だけでもう、実はこの本読む必要なくなっちゃったんじゃないかって気がするよね、実のところ。こういう「反則」的行動自体は確かに面白くはあるんだけれど、同時にそんな行動を取るやつが「信頼に値しない」というのもたいてい事実だし。
 ……いや、取ってもいいけど、それを「前がき」で弁明しちゃイカンよねえ。やったらやりっぱなしで、あとは黙ってなきゃ。「反則」の言い訳くらいみっともないことはないよ。

 あの同時多発テロに対して、文学者たちが表立った行動を取らなかったことに対して、作者は、「かつてない苛立ち」を覚えたと言う。
 「あらゆる戦争行為に協力しない、と正論をとなえる勢力はジャーナリズムで存在感をなくし、10年前の湾岸戦争では反対声明を出した文学者からも目立った動きがなかった。その『鈍さ』。漫画をなりわいとするサブカルチャーの人間として『逆ギレ』した。」
 ……気持ちはわからなくはない。けど、あまりにストレート。というか、「文学者へのヒガミ」を動機に書いてるんじゃん、このヒト。正直すぎる述懐ってのは、かえって「胡散臭く見える」ってこと、この作者、考えて書いてるのかね?
 「戦争に協力しない」という意見を述べるのは構わないけれど、それって国際的には一つの「意見」ではあるけれど、別に絶対的な「正論」じゃないでしょ? 唯一にして普遍的な「正論」なんてものはどこにも存在しないんで、それを口にした時点で、このヒト、論理が語れる人ではないということが見えてしまう。
 第一、「文学コンプレックス」をバネにして「アジビラ」書くってのが読者に見えちゃうってのは、アジとしては最低レベルではないのか。

 「反戦」を唱える者はたいていヒステリックだ。
 そのヒステリックさが反発を招いたために、最近の「復古」ブームというか、「戦争もまた一つの選択肢であった」という肯定論を認める風潮を作ってきたということを、反戦論者たちは情けないくらいに自覚してない。
 「日本国憲法の英語原文の和訳」とか面白いこともやってるけど、概して説得力に欠けるのは、やっぱり「でも、日本が攻められたらどうするの?」という疑問に答えてない(答える気がない)からでもある。
 私も「反戦論者」だからこそ、自分の立場に欠陥があること、わかるんである。そこから逃げてる文章はどんなにページ費やしたって、ただの駄文にしかならないんだよねえ。
 結果、ただの「自己満足論」にしかなってない。どこかにもちっと説得力のある「反戦論」はないものかねえ。

03月12日(火)
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