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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■また一人のスケープ・ゴート/『新千年記(ミレニアム)古事記伝 YAMATO』(鯨統一郎)ほか……“NEW”!
今に至るも、私の『うる星やつら』テレビシリーズのベストは、第86話『竜之介登場! 海が好きっ!!』(脚本・伊藤和典)と、第87話『さよならの季節』(脚本・押井守)の2本である。かたや原作に忠実、かたや原作を逸脱した両極の傑作2本が、このときは連続したのだ。
……あの年の夏は満たされていたなあ。
鯨統一郎『新千年記(ミレニアム)古事記伝 YAMATO』(角川春樹事務所/ハルキ文庫・630円)。
前編の『ONOGORO』は途中で妙なミステリ風味を入れたために、かえってリアルな物語をやりたいのかファンタジーをやりたいのか、ハッキリしない話になってしまったが、そこんとこ反省したんだろう。この後編、特に「謎解き」の要素は持ちこまれず、ただひたすら海幸山幸から推古女帝に至る歴史が、作者の「解釈」に従って紡ぎ出される。
かつて『邪馬台国はどこですか?』で展開された「邪馬台国東北説」、ひいては、「邪馬台国+伊都国=大和国」説も、いささか唐突な印象を与える形で語られる。実際、鯨さんのこのデビュー作を読んでいなければ、「どうして?」と首を捻る読者も多いのではないか。
私にもよく分らないのは、聖徳太子(厩戸王子)の娘である馬屋古女王(うまやこのひめみこ)を推古天皇に擬していることだ。
史実は、推古天皇の本名は額田部皇女(ぬかたべのひめみこ)、ないしは豊御食炊屋比売命(とよみけかしきやひめのみこと)であり、推古帝の摂政として皇太子となっていたのが聖徳太子だったのである。……えーっと、確か『邪馬台国はどこですか?』中の『聖徳太子はだれですか?』では、鯨さん、聖徳太子と蘇我馬子と推古天皇が同一人物、とかいう説、唱えてなかったっけ?
史実とも自分の説とも違ってるけど、これ、どういうわけ? もう一人「同一人物が増えた」ってことなのかな? ……「馬」って字がつきゃ親子だろうが同じ人間ってか。ちょっとムリがありすぎるぞ。
欽明天皇の本名が「ハルキ大王」ってのは、角川さんに媚びてるのか? これも正しくは天国排開広庭天皇(あめくにおしはるきひろにわのすめらみこと)であって、 省略するなら「ヒロニワノ大王」が妥当なところだ。「アメクニオシハルキ」は、「この天地を押し広げられたもうた」という意味なので、途中では切れない。
論理をアクロバット的に展開していた「邪馬台国」は傑作だったが、ただ解釈を押しつけるだけの、この「新千年紀」シリーズを読んでいても、知的興奮は何ら感じられない。「おお、なるほど!」と膝を打つ快感が与えられていないからである。
……ま、でもね、その辺はまあ、たいしたことないのよ。
読んでて一番、「……なぜ?」と思うのは、ヤマトタケルの謎についてだろう。ミステリーではないから、ネタバレしたって構うまいが、要するに、この宇宙自体が、時を遡ったヤマトタケルの意志から生まれたって言うのね。……(°θ°;) は? ここまで来ると「はあ、そうですか」と言って黙るしかないわな。
最初の印象がよくて、それ以後これだけ印象が悪くなってく人も珍しいよなあ。もう、おカネのためだけに書き飛ばしてるのかね? 才能がもう尽きたってことなのかね?
いくらなんでもそこまで悪口言わんでもいいじゃないか、と仰る方のために、「これはやっちゃいかんだろう」という本文中のギャグを一つご紹介。
多分、タイトルの『YAMATO』に引っ掛けてるんだろうけど、時を遡るヤマトタケルが初めの「淤能碁呂(オノゴロ)島」を見つけて一言。
「淤能碁呂か、なにもかもみな懐かしい……」
確かに千年に一つ出るか出ないかの超氷河期ギャグだ(-_-;)。
03月11日(月)
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