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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■イビツな職場だと思うぞ、実際/『ビートたけしドラマスペシャル 張込み』/『真・無責任艦長タイラーE 凱旋編』(吉岡平)ほか
10年前の1991年にもフジ系の金曜ドラマシアターでテレビドラマ化されたことがあったけど、ヒロインの大竹しのぶの名演が目立ったものの、主演の田原俊彦がどうしようもない大根だった。つーか、刑事は張り込みしてるけど本当は主役じゃないんだよ。あくまで観察してる先のヒロインが主役なんでさ。それを田原俊彦をかっこよく見せようって演出するものだから、ドラマが分裂してつまんなくなる。
今回もなあ、多分、「ビートたけし主演」ってとこで、どうしようもなくなるんじゃないかなあ、と思ってたけど不安は的中。だから刑事にスポットあててどうすんだよ。
何かいかにもイマドキの設定でよう、仕事人間の下岡刑事(たけし)の家は、妻(宇都宮雅代)は不倫してて娘は父親を親とも思わない「家庭崩壊」の状況でさ、しかもこの張り込みの最中、犯人に撃たれて死んでやがるの。そしたら今まで離れてた家族が涙を流すって……おい、これで「ドラマ」に仕立てたつもりか。
そのたけしが死ぬきっかけになったのが、キャリアエリートで下岡に対抗意識を持ってる若い柚木刑事(緒形直人)の勇み足ってのもベッタベタ。中学生の書いた脚本かよ、これは。ワザと時間軸を入れ替えて過去と現在が行ったり来たりするのも設定が陳腐だからウルサイだけ。
で、犯人と元恋人の二人がさあ、田辺誠一と鶴田真由だよ。ちょっとイマドキ狙い過ぎだって。田辺誠一は逃亡生活の疲れた様子がまるで見えないし、鶴田真由も生活に疲れた感じが全くない。
まあキスシーンは濃厚で楽しめたけど。っつーか2時間見て、その中でそそられたのがそのシーンだけってのはなんなんだ。
何が一番腹立つって、原作の舞台九州なのにそれが意味なく和歌山に変えられてる点なんだよな。ミステリと作品の舞台との関連性を軽く考えすぎてないか? あのさあ、「松本清張」って名前、信頼のブランドみたいなもんなんだぞ。少しはそのこと考えてドラマ作れよ。無駄な作家性発揮されたって、原作越えられるものじゃないんだよ。
……まあ、この『張込み』と『鬼畜』、ギリギリ『天城越え』と『疑惑』ぐらいのものだよなあ。原作以上におもしろかった映画って言えるのは(『砂の器』は却下)。ああ、ドラマしか見たことないって人は松本清張をこんなもので判断しないようにね。
昨日、しげが忘れて悩みに悩んでたコトバ、急に思い出したらしい。
「アニサキスじゃなかったよ、『クラミジア』だった」
「……で、その『クラミジア』のなにが聞きたいの」
「かかったことある?」
「あるかあああああ!」
それのどこが大事な用だ。
脱力して寝る。
吉岡平『真・無責任艦長タイラーE 凱旋編』(エンターブレイン/ファミ通文庫・672円)。
7巻あたりまで引き伸ばすかな、と思ったけど6巻で完結。
分量としてはまあ、妥当なところかな。作者もあとがきで書いてた通り、富士見ファンタジア文庫版の方は筋はわかるけど描写はないに等しかったからね。
宇宙戦争の描写自体は何となく『銀河英雄伝説』と似てるなあ、という感じではあるのだけれど(ランダムワープって設定は新機軸なのかもしれんが)、実のところオモシロイのはキャラクター同士のやりとりなんだよね。
圧倒的多数のラアルゴン艦隊を前に、タイラーは起死回生の策として、故・キクチヨ・ミフネの作戦を採用するか否か。
これを最初からタイラーが考えついた作戦ということで設定したって、話は進められる。で、ラストは「さすがタイラー」とみんなが誉めそやして終わればいいんだから。でもそれは作中人物たちがなあなあでお約束の展開をなぞってるだけだ。
ミフネの策と設定することはある意味ドラマを分裂させてしまう。
絶好の策が「他人の考えた作戦だから」という理由で取れないとなればタイラーの狭量さを露呈しちゃうことになるし、採用したらしたで、「他人の尻馬に乗って、アンタ主役じゃなかったのかい」ってことになる。
どっちを取ってもタイラーの株は落ちる。いわゆる「女か虎か」ってヤツなんだね、これ。
これがうまいこと収斂できなかったらせっかくの盛り上がりも一気に萎んじゃうんだけど、さて、その結末や如何?
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03月02日(土)
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