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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■探偵小説の終焉/渡辺啓助『亡霊の情熱』/『サトラレ』1巻(佐藤マコト)
自分の情熱、愛情、嫉妬や憎悪、われわれの心そのものが我々を苦しめる元凶であることに。
そして、それらから解放された瞬間こそが、われわれに真の自由と安心を与えてくれることに。
渡辺啓助の目は、その一瞬を一も見逃していなかったのである。
新聞記事には「1929(昭和4)年に雑誌『新青年』に『偽眼のマドンナ』を発表しデビュー」とあるが、補足説明が要るであろう。
一つはこのデビュー作が、女優岡田茉莉子の父でやはり美男俳優として知られた岡田時彦の名義で書かれたこと(つまりゴーストライターだったわけね)、タイトルの読み方が「いれめのまどんな」であることだ。
作品リストをあいうえお順で並べる時、間違えて「き」の項に入れちゃう人、多いんだよね。
作家・故渡辺温は弟(もうすぐ創元で文庫全集が出る予定)、画家・渡辺東は娘。
仕事が長引いて帰りが遅くなる。
その旨、しげに連絡を入れるが、しげ、風邪が本格的に悪化してきたらしく、電話口でぜいぜい言っている。
「……ごめん……げほげほ!……一人で……タクシーで……がほげへごほ!……帰ってきて……ぐへげひぶぺ!」
なんか聞いてるだけでアワレになってくるな。
あんまりかわいそうなので、せめてほか弁でも買っていってやろうかと、近所の「ほっかほっか亭」に寄ってみるが、こういう時に限って「改装中につき閉店」である。
お約束な展開だなあ。
仕方なく、コンビニ弁当をいくつか買って、それですますことにする。
しげはコンビニのよりほか弁の方が圧倒的に好きなのだが、この場合、諦めてもらうしかない。
私も家事をする元気はないので、夕食は「Coco一番屋」でカレーを食ってすます。
そこで読んだスポーツ新聞で、映画監督倉田準二氏の訃報を知り、茫然。なんでこう、連続して好きな人が死ぬのだ。
倉田準二(くらた・じゅんじ)21日午後7時15分、肺炎のため死去、72歳。
先日CSで見た、人によっては時代劇の最高傑作とまで評する『十兵衛暗殺剣』はこの人の監督。
けれど私たちの世代が一番親しんでいたのは、なんといってもテレビシリーズ『仮面の忍者赤影』であろう。……ちゃんとDVD買ってるよう。
敵忍者の奇抜な設定や、破天荒なストーリー、独特の映像センスなど、様々な魅力が語られているが、私はなんといっても役者さんたちの演技を見るのが大好きだった。
まだ映画が本編と呼ばれ、テレビシリーズに出る役者は軽蔑されていた時代、それでも新人や大部屋の役者さんたちが手を抜かずにエンタテインメントに徹して演じていた忍者たち。
……甲賀幻妖斎の天津敏さんも、暗闇鬼堂の原健策さん(松原千明の父ちゃんと言ったほうが今は通りがいいか)も、魔風雷丸の汐路章さんも、雲間犬彦・猿彦の二見忠男さんも、もう鬼籍に入ってしまった。
もちろん、白影の牧冬吉さんも。
有名スターの死に涙する人は多かろう。
けれど、脇役一筋の人たちの死に対して、世間はどうしてこうも冷淡なのか。
よく知らない、というだけならまだマシで、ないがしろにし、蔑みの目で見ている人間がどれだけ多いことか。
牧冬吉の出演映画はたった12本である。
倉田準二の監督作品もわずか12本。
あれだけテレビでたくさんの時代劇を撮ってきた人が、映画の監督としては「つなぎ」にしか使われなかった。日本映画衰退の原因はそんなところにもあったんじゃなかろうか。
それにしても新聞記事に「東映京都撮影所に所属し、『十兵衛暗殺剣』『飛び出す冒険映画』『恐竜・怪鳥の伝説』などの映画を監督」とあったが、『飛び出す冒険映画』ってサブタイトルだけじゃん。肝心のメインタイトル『赤影』が抜けてるぞ。配信元のミスがそのまま各紙に載っちゃったんだろうけど、誰も気づかないんだろうなあ、こういうミスは。
淋しいなあ。
マンガ、佐藤マコト『サトラレ』1巻(講談社・530円)。
出来のよくない映画版を見ていると、絵が必ずしもうまいとは言えない原作マンガがえらく傑作に見える。
……と比較して誉めちゃかえって失礼だね。
設定に難はあるものの、これは立派な佳作である。
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01月22日(火)
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