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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■「檸檬」って書ける?/『BLACK JACK ILLUSTRATION MUSEUM』(手塚治虫)ほか
何のCMだったかなあ、「最近の若いヤツらはイエスマンばかりでいかんねえ」「お言葉ですが社長」「口答えするな!」「なぜだ〜っ!」ってのがあったよな。……シャレになってないって(-_-;)。
「遊び」も「悪」も、それを排除してマットウな人間が出来るかっていうと、そんなことはない。
『檸檬』だって、「ムシャクシャするから現実逃避して幼児退行して、丸善にバクダン置いた気になって、ああスーっとした」って小説じゃないか。イタズラの一つや二つやってこそ人間ってもんだ。
なのに『檸檬』を評論する連中って、たいていその「スーっとする方法」よりも、「何が彼をそこまで追いつめたか」って、それまでの人生とか、環境とか社会状況とかの方ばっかり重視するのな。
そんなことより、たとえフザケてるように見えようが、モラルに反していようが、「みんなで幸せになる方法」を考えた方がよくはないか? 「虚構」ってのはそのためにこそあるんだよ。
芥川龍之介の『羅生門』、あれを「怖い小説」だって思いこんでるやつも多いみたいだけど、なんで素直に「貧乏したら人のもの盗んだっていい」って額面通りに解釈しようとしないかね。
昔、高校の授業で「人間のエゴイズム」がどーのこーのって、教師が教えてたの聞いて、「日本の教師はバカばっかりか」と思ったことがあったが、「『羅生門』は、モラルからの解放の物語である」って的確な批評を教えてもらったのは、大学に入ってからだったよ。
要するに日本の小・中・高校までの授業ってのは全て、「偽善者」としての考え方を仕込む場であって、それ以外の、自分の頭で考える人間を淘汰していくシステムになってるわけだ。
「勉強ばかりで遊ばない。今に子供は気が狂う」
……もう、狂ってるかな?
仕事の帰りに「ミニストップ」に寄って、弁当を買う。
ウチの近所にあるコンビニは「セブンイレブン」と「ポプラ」くらいしかないので、ちょっと珍しいコンビニがあるとつい寄ってしまうのだが、売ってるものにそう違いがあるわけではない。
ミニスト、以前はけっこう弁当にチカラ入れてくれてたんだが、最近は幕の内に毛の生えた程度のモノがちょこちょこっと並んでるだけで、他のコンビニとたいして区別がつかなくなった。
というか、オニギリの種類では「セブン」に負けている。
それでもしげが食うのは弁当の類だろうと、オムレツっぽいのとか、のり弁っぽいのをいくつか買う。
あとは飲み物程度、そんなにオカネを使うつもりはなかったのだが、ふと見ると、インスタント麺で、「黒スパ」「白スパ」というのが目についた。
珍しいものはとりあえず買ってみなければ気がすまないタチなので、早速、両方を買う。
帰宅して、まずは汗を流そうと風呂に入る。
湯船に使っていると、しげがいつの間にか忍び寄ってきていて、こちらをじっと見ている。
「なんだよ、どうしたんだよ」
「……いま、鬱なん」
「……は?」
「淋しいとよ」
いきなりそんなこと言われてもなあ。
「何かあったのかよ」
「……さあ?」
どうやらただ単に狂っただけらしい。
「なんかまた、変な夢でも見たんじゃないのか?」
「……アンタがね、ひどいんよ」
「ひどいって、何が」
「浮気したとよ」
「……夢だろ?」
「夢でもひどいんよ。私の目の前で浮気するもん」
「……だから、おまえが勝手に見た夢でどうして俺がやつあたりされなきゃならんのだ」
「知らん」
「……おまえ、内心、俺に浮気してほしいとか願望もってないか? そうやって自分を悲劇のヒロインに仕立て上げるのヤメロ」
「……悪男(わるお)」
わしゃ西川浩司か。
どうせ腹を減らしているからロクな夢を見ないのである。
しげに弁当をやって、私は例の「黒スパ」を作ってみたが、その正体はイカスミラーメンであった。
まあ、予想はしてたが、そんなに美味くない。珍しいものって、そのときだけでどんどん消えていく。結局後々まで残ってくものって、スタンダードだけなんだよね。
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09月27日(木)
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