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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■今日も伏字、明日も伏字/『トランジスタにヴィーナス』2巻(竹本泉)ほか
 名探偵もののパスティーシュは数多いが、『黄色い下宿人』はその中でもベストに数えてよいくらいである。ホームズ失敗談って設定、熱心なシャーロキアンは嫌うかもしれないが、これくらい上等な出来映えなら満足するんじゃないだろうか。やっぱ「ジュージューブ氏」が最高っスよ(^^)。残念なことに、その面白さは日本人にしか解りそうにないんだけどね。昔、栗本薫のエッセイでこの作品の存在を知って、懸命に探したけどどうしても見つけることが出来ず、旺文社文庫の『虚像淫楽』に収録されたときに狂喜したこともあったなあ。

 『SF Japan』2号、マンガと対談だけ先に読む。
 マンガ、伊藤伸平『天使の微笑み 悪魔の頭脳』、女マッド・サイエンティストものだが、SF雑誌に載るギャグマンガって、どうしてこう吾妻ひでおの亜流になっちゃうのかな。横山えいじしかり、とり・みきしかり。で、みんなマイナー作家のコースを突っ走っちゃうとこまで同じだ。いいのか? それで。
 あさりよしとおやあろひろしはも少しメジャーかもと思ってたが、だんだん仲間になってきた感じだな。唐沢なをきは『スピリッツ』に書いてる限りは安泰であろう。
 いや、マイナーが悪いってことじゃなく、マイナーのくせに亜流になっちゃまずいだろう、ということだ。オリジナリティのないマイナーはただのクズだし。
 で、もう一本の森脇真末味の『ナビゲーターから一言』はフレドリック・ブラウンと。ということは藤子・F・不二雄か。SFギャグでこの二つのパターン以外のものも見てみたい気はするが。諸星大二郎の『ど次元物語』みたいなものとかね。
 上遠野浩平と三雲岳斗の対談、若手のホープ(うぷぷ)同士の激烈バトル……という感じにはならない。私より五、六歳年下なんだな、この二人。イマドキの若い人たちは大人しいねえ。
 確かに上遠野さんも三雲さんも、私より若いのによくSFを読んでいる(というか、私が読んでないだけなんだが)。でもなにか違和感を感じるのは、上遠野さんが「ジャンルとか歴史なんてどうでもいい」と言いながら、「SF」に拘っているという矛盾である。なんだか、第一オタク世代にどうしてもかなわない第二世代のオタクが、仕方なく否定的言辞を用いてるんだけれども、それが結局は自分のコンプレックスを顕在化させることになってしまってるって感じがするんだよな。
 「『ペパーミントの魔術師』は、ヴォネガットの『猫のゆりかご』」……って言われても、どこがどうそうなんだかよく分らないなあ。ただ、「乗り越えようとする意識がないから過去の作品が使える」と上遠野さんが言ってるのは、明確に自己欺瞞である。「乗り越えられないからパクってるのだ」という第三者が見れば明らかな事実に気づいてないのだな。ちょっと上遠野さんにガッカリした。
 読者にSF史を遡って本を読まねばならない義務はないが、作家が過去の作品に敬意を払うことをしないのは、ただの怠慢だと思うけどなあ。

 帰宅すると女房が珍しく買い物をしている。でも買ってきていたのはインスタントラーメン。
 「おカネないから」とトボケたことを言う。「お金を使いたくないから」だろう、この守銭奴め。
 買い忘れている本があるので、本屋に行くことにする。女房は仕事で行けないので、また僻む。
 「どうせおいしいもの食べるんでしょ」
 何を食べたか解らないのが気に入らないらしい。なら解るようにしてやろうと、本屋を回ったあと、女房のバイト先のリンガーハットに行く。
 仕事中だから親しげに会話するわけにもいかない。何気なく太めん皿うどんを注文し、さりげなく、ほーら、この本買ったよーと見せびらかすつもりでテーブルの上に表紙がわかるようにして、竹本泉の『トランジスタにヴィーナス』2巻を置いた(さりげなくもなんともないがな)。
 すると、料理を運んできた女房が、ボソッと「それ、もう買った」と言う。あっ、こいつはまた本を買って私に隠していたのだ。ウチでは私と女房がお互いに同じ本を買ってしまうことがよくあるのだが、それを避けるために出来るだけ行動をともにし、私が本を買った時は「これとこれは買ったよ」と必ず報告しているのに。

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03月27日(火)
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