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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■多分、猫たちにもある愛/『CYBORGじいちゃんG』2巻(小畑健)ほか
女ももと女優だったが、夫の死後、一人暮らしが気楽だからとメイドの葉子を解雇することにしたのだった。
夫はまた、たくさんの猫を飼っていたが、女はその猫も全部、「処分」してしまっていた。
「迷い猫を飼ってる余裕はなくなったの。でもどこかに猫たちの集まる町はあるわ。そこに行きなさい」
女は萩原朔太郎の『猫町』を譬えに出した。葉子に残された時間は1ヶ月。
途方に暮れる葉子に冒頭の男が忍び寄り、客席に連れ出す(以下、二人の会話は全て客席で行われる)。
「どうだ葉子。決心はついたか?」
「……駄目。私に奥様は殺せない。それにあなた、そのあと私を捨てるでしょ?」
「ばれたか」
あっさり肯定して笑う男。数ヶ月前に男は女を殺して財産を横領する計画を葉子に持ちかけたのだった。しかし男は決して自分の素性は明かさなかった。
「ねえ、教えて、あなたは誰? なぜ奥様を殺そうとするの?」
「ノラ猫に教える名前はない」
女を殺す別の手を考える、と言って男は去る。
男は語る。
「女は猫か。女がいつだって男にだまされたがってるっていうことで言うなら、それはその通りだ。男をトリコにしているつもりで、餌を与えなければ野垂れ死にだ」
女主人が映画監督の遠藤と話をしている。
「いきなりこんな話をするのはなんだが、カムバックする気はないかね?」
猫をモチーフにした女の映画を撮りたいのだと語る監督。
女は丁重にことわる。残念そうに帰る監督。帰りしなに手紙が来ていたと手渡す監督。
葉子が覗きこむとそれは死んだはずの女の夫、正興の筆跡。
驚く葉子を見ながら平然と女は、
「悪戯ね」
と破いて暖炉に捨てる。
葉子の報告を聞いた男は笑みを浮べる。
「あなたのしたことなの?」
「いや、違う。でもこれは利用出来る」
それから屋敷には夫の「影」が現れ始めた。
「あの……今、お電話があったんですけど、男の人の声で、意味のとれない言葉を喋って……」
「……心当たりがあるのね?」
「でもまさか……旦那様の声だなんて……」
「……馬鹿馬鹿しい」
白い服を着た男の影が窓に映る。
「旦那様がそこに……」
その姿が猫に変わる。
「見間違いよ……」
日が経つにつれ、女の顔が蒼白になっていく。
「ねえ、あなた、夕べ奥様に電話かけた?」
「いや?」
「じゃあ、あの猫の声は……」
「ホンモノの幽霊だって? まさか。悪戯ものはほかにもいるさ」
猫の声は少しずつ増えて行く。
女は見えない猫の影に怯える。
「猫の首に鈴をつけるの……」
どこにもいない猫を追いかけて鈴を持って邸内をさ迷う女。
「もうひと押しだな」
葉子は男にもうやめるよう懇願するが、男は聞き入れない。男は女が夫を殺して財産を横領したのだと言う。信じようとしない葉子。
「……ねえ、でも、あんなにたくさんの猫、どうしたの?」
「録音さ。実際につれてきたわけじゃない」
「でも……私も見たのよ。庭に一面、ビッシリと、たくさんの猫」
女はうわ言を言うようになる。
「恨んでるのよ、あのひと。私を許さないって……」
ふと、男の「女が夫を殺した」という言葉を思い出す葉子。
「……奥様が、旦那様を殺したんですか?」
頷く女。
女は自分を愛人として住まわせておきながら家にいつかない夫を恨んでいたと言う。葉子は自首するよう女に勧めるが、女は首を横に振る。
「この家を離れるのはいや……。あの人の家だもの……」
男は語る。
「女はじきに参るはずだった。女は遺言で財産を葉子に残す。あとは僕の自由になる。そのはずだったんだ」
葉子は男にもう協力しない、と宣言する。
憤る男。
二人がもめているところへ偶然現れる女。
「あなた……あなたなのね!」
とっさに夫の振りをする男。
女は涙を流しながら男に抱きつく。
「愛してるわ……あなた!」
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03月11日(日)
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