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無責任賛歌
by 藤原敬之(ふじわら・けいし)
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■水の中の失楽/アニメ『も〜っとおじゃ魔女どれみ』1・2話ほか
 環は、恭介が何らかの手段で葉子をショック死させたのではないかと疑っていたが、決め手がなく、当たって砕けろとばかりこの水族館にやってきたのだった。
 恭介と茉莉は、その時現場におらず、外で言い争っていたと証言する。それは他の人間にも目撃されており、二人のアリバイは立証できたかのように思える。
 しかし、疑問は残っていた。
 あのバッグが、あの時以来、行方不明になっていたからである。また、葉子がなぜあの時外に出ずに水族館の奥へ行ってしまったのか、その謎も解けないでいた。
 環は、バッグの中身が恭介と葉子との間にできた赤ん坊ではないかと推理する。葉子は携帯の振動で水族館の奥に誘い出される。そして裏口から回った恭介と茉莉が、赤ん坊の死体を水槽の中に投げこむ。それをガラスごしに見た葉子はショック死したのではないかと。携帯は後で茉莉がそっと抜き取り、あたかも自分のものであるかのように偽装したのだ。唖の葉子が携帯を持っているとは思わないから(実際は画面を見ることはできるので、メールのやりとりをしていた)、警察も携帯が紛失していたことに気づかなかった……。
 しかし、恭介はその推理を一笑に伏す。
 なぜなら、恭介は男装した女だったからだ。精神的には男であるために、男の格好をしているのだと恭介は言う。女に女を妊娠させることはできない(茉莉はもちろん、恭介を女と知って愛していた)。更に、心臓が悪くペースメーカーを胸に入れている葉子が携帯を持っていないのは当たり前であった。
 恭介(実は恭子)は隠していたバッグを環に見せる。中身はただのガラクタだった。何でこんなものを葉子が持っていたか分らないが、自分は係わり合いになりたくなかったので、葉子は初めからバッグなんか持っていなかったかのように嘘をついたのだと。
 結局、葉子の死はただの心臓発作だったのかと落胆して環は去っていく。

 環が去った後、恭子と茉莉は熱いキスをかわす。茉莉は葉子を殺したのがやはり恭子ではないのかと責める。
 ずっと一緒にいたのに、どうやったら葉子を殺せるのかと反駁する恭子。茉莉は、恭子が持っていたバッグの中身がただのガラクタだったことが気になっていた。バッグの中身を葉子自身も知らなかったのではないかと茉莉は推理する。バッグを恭子のもとに運んでくるように頼まれただけではないのかと。
 もちろん、恭子に頼まれて。
 別に葉子を殺すつもりはなかった。ただ意味もなく重い荷物を運ばせ、葉子を苦しめたかった。自分一人が不幸であるかのように振る舞い、哀れんでもらおうと恭子にすがりついてくる葉子が憎らしかった。
 なぜなら、恭子もまた、身を業病に侵された身であったから。
 これは未必の故意による殺人ではないのか。
 恭子は答えない。

 しかし、もし、ほんの少しでも恭子に葉子への殺意があったとしたら……。
 恭子が愛していたのはやはり葉子だったのだと茉莉は気づく。

 少女=茉莉は紳士=恭子の父に語り終わる。
 恭子の父は恭子の死因が手術の失敗によるものだと知っている。助かるか死ぬかは五分五分であった。手術しなくても数年は生きられた。それを手術するように勧めたのは茉莉だった。
 数年の命を縮めることが復讐だったのかと恭子の父は問いかける。
 しかし茉莉は静かに寂しげな微笑を浮かべただけで、何も答えなかった……。 

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 題名はあくまで仮題なんで、竹本健治の『匣の中の失楽』をもじっただけ。でも展開そのものはそう悪くもないと思うんだがなあ。
 女房はトリッキーなもの自体、あまり好みではないようだし、ほかのメンバーも殺人にこだわる芝居はどうもねえ、と言ったような感触であった。
 するってえと、ミステリーやるなら北村薫や加藤朋子、はたまたはやみねかおるの線を狙わねばならんかなあ。
 よしひと嬢をミス・マープルみたいなおばあさん探偵にするのはどうか、といアイデアを出すと、女房が少し乗り気になる。その線で一本設定を考えてみようかな。


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02月11日(日)
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