ID:104863
G*R
by K・カヲル
[120054hit]

■その先の5題02
後少し ギン
のばした先 十一番隊
跳ね返る 日+雛+浮+市
君の本当 四番隊(勇+荻)
ちいさな穴 ギン


拍手御礼文050808-0831 配布元キョウダイ



『後少し』

 その日はとても暑くて、水分を多く含んだ空気が重く漂っていた。青い空は雲一つ浮かべずにただそこにあり、もう天頂を降りつつあるというのに、太陽の白い光が分け隔てなく射殺そうとしているかのように鋭く降り注がれている。
 ギンは屋根の上で昼寝をすることも出来ず、三番隊隊舎裏にある中庭の木陰で幹にもたれて空を眺めていた。繁る葉の隙間から覗く空はただ青く、それがいつかの空を思い出させるようで、いつの空なのか分からなかった。ただギンは眺めている。そして、遠くから聞こえる声とわずかな霊圧に気づいて、全身を澄ませた。
「……ら、吉良、あたしも手伝おうか。他にまだ仕事あるんでしょ」
「ああでも松本さん。この間、日番谷隊長が怒っていませんでしたっけ」
「大丈夫よ。隊長ったら、いっつも仕事しろって怒るけど、あたし、その日の仕事は終わらせているんだから」
「…………時間が余ったら残りの仕事をしないんですか」
「明日の仕事は明日にするものよ」
 乱菊の悪びれない物言いに、ギンは口元に笑みを浮かべた。おそらく乱菊は片手を腰にあてて、あの艶やかな笑みを豪快に浮かべて吉良に向かって笑っているのだろう。そして襷を締め直して言うのだ。
「ほら、どうせウチとの共同作業なんだから気にしない。さっさと準備」
「はいっ」
 ギンは細い目を閉じた。乱菊のはっきりとして、けれど柔らかい声がギンの体を常に支配する緊張を緩める。こうしているだけで安らかになれる。ただこれだけ、これだけでいい。
 もう少しだけ、こうしていられれば。
 あと少しだけ、こうしていられれば。
 戻れない道を進んでいることを知りながら、願いにもならない呟きをギンは胸の中にだけ響かせる。





『のばした先』

「どうした、弓親。食わねえなら俺にくれ」
「誰が食べないって言ったよ。好きな物は最後に味わうだけさ」
 小鉢を一角の箸から守るように引き寄せて、弓親は目の前の友人を睨む。一角は悪びれもせずに魚の切り身をつついている。一角の定食は鯖味噌煮定食で、それには弓親が頼んだ海鮮丼に付いている白玉あんみつ(小)は含まれていない。十一番隊に最も近いこの食堂では、丼にのみデザートが付いていた。
「お前なあ、最初に食っておかねえと何が起こるか分からねえぞ」
「少なくとも君に盗られるような間抜けではないつもりだよ」
「油断していいのか、てめえ」
 弓親は苦笑とでもいうような笑みを浮かべて頭を振った。一角と弓親は学院以来の仲だ。手を伸ばした先には常にお互いの姿があり、背中を預けるのもお互いだけだ。油断も何も、一角の行動パターンは知り尽くしている。
「だいたい僕はデザートを食前食中に食べるような慌てた真似はしないよ。美しくない」
「……慌てた方がいいと思うぜ、俺」
 一角の言葉が終わるか終わらないかの時に、弓親の脇から小さな手が伸びて白玉あんみつ(小)の小鉢を取った。
「食べないなら貰っていい?」
 咄嗟に防御の態勢を取りつつ弓親が振り向いて下を見ると、完全に気配も霊圧も消した副隊長が小首を傾げて笑っていた。完全に気づかなかった。己の未熟さに溜息をつき、弓親は額に手を当てる。
「……どうぞ、副隊長。お食べ下さい」
 弓親の言葉に破顔一笑し、やちるは弓親が引いた隣の椅子に飛び乗った。一角が立ち上がり、お茶を取ってくる。
「お茶ですよ、副隊長」
「ありがと、裸電球」
「……呼び名を変えてきたって失礼さは変わらねえぞこのドチビ」
「じゃあ、つるりん」
「てめえいい加減に頭ネタから離れろや」
 漫才のようなやりとりを無関係を装って眺めていた弓親だったが、ふと周囲を見渡し、霊圧に耳を澄ませた。

[5]続きを読む

02月03日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る