ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■その先の5題01
瞼の裏 剣やち
目線の先 六番隊
壁の向こう 日
笑みの真意 三番隊
嘘の約束 ギン乱
拍手御礼文050726-0808 配布元キョウダイ
『瞼の裏』
眼を閉じれば鮮やかに甦るあの光景。
あの空の青さもその高さも、雲の白さもその数も、葉裏の緑の深さもその葉擦れの音も、地面の湿り具合もその匂いも、全てが今も鮮やかなまま。
あなたがくれた名前によって、あたしは形を与えられた。
あなたがくれた名前によって、あたしは世界を与えられた。
あの日、あたしは「あたし」になった。
「剣ちゃん」
桃色の髪が剣八の肩の上で揺れる。鈴の音が軽やかに鳴る。やちるはいつものように肩の上で青く晴れ渡った空を仰ぎ、そして剣八の頭に頬を寄せた。
「いい天気だね」
「そうだな」
「あの日の空みたいだね」
「そうだな」
やちるが再び空を見上げる。剣八もつられるように空を仰ぎ、そして眼を閉じた。
『目線の先』
「何だ」
目の前を歩いていた白哉が振り返り、恋次は一瞬だけ慌てた。
「どうした。私に用事があるのではないのか」
「いえ……何でもありません」
感情の読みとれない冷たい視線を受け、恋次は軽く頭を下げる。用事があったわけではなかった……いや、今はまだ用事を手に入れられない。
現世で行方不明になっている幼なじみの姿が浮かび、恋次の目が細められた。
頭を上げると、すでにこちらに興味をなくしたのか、白哉は先を歩いている。恋次は再び歩を進め、目の前の男の背中を睨むわけでもなくただ見やる。ただ、見ている。
いつか。
いつかいつかいつか。
自分はここまで来た。やっとここまで辿り着いた。この昇進を知らぬ幼なじみは、この腕章を持つ姿を見て、どう思うだろう。何を言うだろう。どんな顔をするだろう。
ここまで来た。そして、いつか。
お前を。
恋次の目線の先には、まだ手も届かない背中があった。
『壁の向こう』
まだ背も追いつかないまま、まだ手の大きさも敵わないまま、彼女は白い制服を着て、壁の向こうへ行ってしまった。
日番谷は、高い高い壁を見上げる。
別に、この場所での暮らしに不満はなかった。自分を拾い、育てた老婆と、姉のように接してくる少女との穏やかで緩やかな日々。食べ物にも飲み水にも困らない。酷い出来事は年に一度あるかないか。春は桜。夏は花火。秋は紅葉。冬は雪。質素でも、そこには豊かな日々があった。
けれどそれは、隣に彼女がいてこその日々。
壁の向こうに何があるのか。
何があるから、彼女は向こうに行ったのか。
「婆さん、俺、受験しようと思う……いいか?」
日番谷の言葉に、老婆は頷いて、微笑んだ。
老婆がその微笑みのまま眠るように静かに息を引き取ったのは、日番谷が真央霊術院に合格した次の日の、寒さも和らいできた朝だった。
『笑みの真意』
「三番隊副隊長に任命されました吉良イヅルです。どうぞよろしくお願い致します」
吉良は緊張でひっくり返りそうになる声を押さえて、直立不動で着任の挨拶を述べると、九十度に腰を曲げて敬礼をした。よく磨かれて黒光りしている木の床と顔を合わせていると、頭の上でくつくつと笑う声がする。
「顔を上げ。こちらこそよろしゅうな」
柔らかい物言いで、市丸が言う。顔を上げると、朝の柔らかい光を背にして、輪郭のぼやけた市丸が目の前にいる。
あの日。
集団の虚に囲まれて、恐怖に動けなくなっていた自分達を、鮮やかに助け出したあの背中。微笑みながら、舞うような身のこなしで虚の体を切り裂いていったあの力。
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02月02日(土)
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