ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■21 懺悔
鏡を見るたびに、心に刻み込んでいたのです。
これと同じ顔の少女を捜し出そうと。必ず。必ず。
私と妹が死んだのは、妹が産まれて数ヶ月ほど経った頃でした。どこもかしこも貧困で、まず最初に父が残りの食料全て残して消えました。次に母が、ありったけの金目のものを掻き集めて食料を手に入れたかと思うと、その夜に消えました。残された私は、まだ何も知らない妹を抱えて東奔西走しましたが、食べるものもなく、飲める水もなく、守る者のない二人の姉妹では生き抜くこともできませんでした。
父と母が残してくれた全てのものを使い切った夜。
妹を抱えて、私は水も少ない沼に沈んだのでございます。
これで終わると思ったのです。
何も知らなかった愚かな私はこれで全てが終わると思ったのです。
共に死んだために、共に同じ場所に落とされたことは妹にとっては幸せだったのでしょうか。
まだ喋れない、あどけないあの子は、ただ私を見て笑っていました。
大きな瞳に映る私の顔は、頬が痩け、眼ばかりが大きくなり、乾いた肌をしていました。髪はぱさぱさと乾き、鎖骨が飛び出していました。
もう、限界などとうに越えていました。
限界になって沈んだのに、辿り着いた場所は更に苦しいものだったのです。
そして何よりも苦しかったことは。
私には必要のなかった食料が、妹には必要だったということでした。
まだ固い物を食べられない妹のために、私は食料を探し続けました。
米などないあの地では、重湯一つもあげられません。似たような植物を探しては煮込み、果物を採っては果汁を絞り、何もない日々が続いたときには……食べ物の必要のない私の血を、飲ませました。
妹を誰かに攫われぬよう、私自身が誰かに襲われぬよう、眠れない夜が続き、隠れる昼が続き、妹に話しかけるだけの日々が続きました。
どれくらい、そうしていたのでしょうか。
痩せ細った自分の腕を見て、乾ききった自分の頬に触れ、問うても答えのない問いを狂ったように呟き続ける自分の声に気づいて。
柔らかい、ふくよかな妹を抱きしめて。
ある日、何もかもが嫌になった私は、してはならないことをしてしまったのです。
死ぬ気力もなく、生きる気力もなく、私は、妹を、たった一人の妹を。
捨てたのでございます。
誰か拾ってくれるだろうと、あの場所ではそんな人間などいないことなどよく承知していたはずなのに、あの日の私はそう考えることだけが救いのようにすがりつき、唯一持っていた柔らかい産着で妹をくるみ、お地蔵様の足下に妹を残して走り去りました。お地蔵様が妹を守ってくださるはずだと、ありえないことを呟き続け、脚が棒になるまで走り続けました。
そして物陰に隠れて、その恐ろしい、一人の、独りの夜を過ごしたのでございます。
愚かしい私に微笑んでくれた妹はもういませんでした。
罪深い私の頬を撫でてくれた妹はもういませんでした。
その夜はとても冷え込み、私は一人、がたがたと寒さにではなく何かに震え、夜明けを待ちました。
そして、空が白み始めた頃、一目散に妹を捨てた場所まで走っていったのでございます。
疲労と睡眠不足で貧血になりながら、私は走り続けました。幾度も転び、膝は擦り剥けて血が流れていました。それでも、独り残された妹を思えば、それくらいのことは何ともなかったのです。ただ走り、走り続け。
妹はおりませんでした。
その、空っぽの光景を今も忘れることが出来ません。
ただ風が吹き、乾いた音を枯れ草がたてていました。色のない、乾いた光景のなか、妹の姿はどこにもありませんでした。
私は立ち竦み、やがて座り込み、そして、叫びました。
叫んで、妹の名を叫んで、そして蹲り、両手を大地に打ち付けました。
そうしてどれくらいしたでしょう。
立ち上がり、私は歩き始めたのでございます。
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11月21日(水)
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