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G*R
by K・カヲル
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■『女性死神協会 会議中02』
 七緒に呼ばれ、ネムが立ち上がると手提げから箱を取り出した。皆が周囲に集まり覗き込む。箱を開けると、一口大の丸いチョコレートが並んでいた。がさがさとした表面に、細かい砂糖が雪のようにまぶされている。
「トリュフです」
「まともですね……」
 七緒が噛み締めるように呟く。その言葉に全員がしみじみと頷いた。
「中身はちょっとスパイシーなガナッシュです。甘いものが苦手な男性でもこちらなら大丈夫かと思います」
「しかもちゃんと考えられている……」
 七緒が感極まったように眼を閉じて呟く。
「ネム。あなた、やればちゃんとしたものができるじゃないの」
「ありがとうございます」
 ネムは軽く頭を下げると、トリュフを小皿に取り分けた。
「どうぞ、お召し上がり下さい」
「いただきます」
 全員が一斉に口に放り込んだ。
「あ、確かにスパイシーね。何の香辛料を入れてるのかしら」
「大人っぽいですね」
「うむ、これならば確かに甘味が苦手でも大丈夫だろう」
「甘くないけどおいしいよ、これ」
 皆が口々に感想を述べ合うなか、七緒は嬉しげにネムに向かって微笑んだ。
「本当。とてもおいしい。本当よ」
 ネムがかすかに口元を緩めた。
「ありがとうございます。阿近さんに相談して正解だったようですね」
 全員が一瞬で顔を青くした。
「あ……こん、さん?」
 七緒が呆然としつつも訊いた。ネムがこくりと頷く。
「はい。チョコレートの作り方は調査で知り得たのですが、男性を口説くということが調査しづらい上にまだ知識として入力されておりませんでしたので、阿近さんに相談したのです」
 乱菊が額を押さえた。
「で、阿近は何を教えてくれたわけ?」
「はい。薬を混ぜればよいと教えて下さりま」
「何!? それは何の薬!? 食べちゃったじゃないの!」
 ネムの言葉を途中で遮り、七緒がネムの両肩を掴んで力強く揺さぶる。その横で砕蜂が冷静に、
「まあ普通に考えれば、媚薬だろうな」
と言った。更にその横で勇音が青い顔で、
「古来の製法でしたら、多くの香辛料の他に阿片とかトカゲの粉末などを入れるはずですね……」
と言う。
 七緒が絶句した。
「別にトカゲくらい食べたことあるからいいんだけど」
 七緒の背後で乱菊が苦笑してやちるに話している。
「技術局で作られたんだろうなーってところがちょっと微妙よねえ」
「そうだね。あそこって変なものだらけだもんねえ」
 答えてやちるは大きく笑った。七緒は一緒に笑うこともできずに固まっている。


 まだショックが消えないのか、椅子に座ってしょんぼりと肩を落としている七緒にやちるが箱を差し出した。
「はい、七緒ちゃん。あたしが作ったチョコだよ。食べてみてくれる?」
 七緒が箱を受け取って蓋を開ける。あとの人達は七緒の後ろから覗き込んだ。
 箱の中にはハート形に固められたチョコレートが入っていた。表面には白いチョコレートで『大好き』と書かれている。
 急に七緒が涙ぐんだ。
「七緒ちゃん?」
 やちるが横から七緒を覗き込む。七緒は箱を机の上に置くと、やちるの手を両手で握りしめた。
「さすがです! さすが会長です! こういうのが一番心に響きます! なんかこう疲れきった心に染みいるようなチョコレートです!」
「えへへー。そう? 剣ちゃんはこれで喜んでくれるよ」
 やちるは嬉しそうに笑う。
 七緒の背後では乱菊がしみじみと、
「なんか実感込めて叫んでるわねえ……七緒」
と呟いた。
「そういう伊勢は作らないのか?」
 砕蜂が小さく勇音に囁く。勇音はそっと首を横に振ると、
「それを仰らないであげて下さい」
と柔らかい苦笑を浮かべた。乱菊が頷く。二人の顔を見て、砕蜂も何かを察したのか、小さく頷いた。
 ネムは真面目な顔をしてやちるのチョコレートを観察している。
 七緒はやちるのチョコレートを一口かじり、小さく笑顔を見せた。「女性死神協会本会ぎ場」にようやく柔らかい雰囲気が訪れた。







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02月18日(月)
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