ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■25 亀裂
「そうだけどね。でも僕らは世界の全てを統べる存在じゃないから、そう言う意味では神ではないだろう?」
「全てを統べる存在なんか、いやしませんよ。そんなお人がいたら」
浦原は小さく息を吐いた。
「アタシらに、こんな研究することを許しはしませんよ」
それを見て、藍染は再び暗く笑った。そしてすぐにその笑みを柔らかいもので塗りつぶす。浦原が鋭い視線を向けているが、藍染は動揺すらせずに目を合わせると笑ってみせる。
「そうだな。世界を揺るがしかねないこんな研究をさせないだろうね……後片付けなど、手伝えることがあったら言ってほしい。ここまできたんだ、最後まで協力したいからね。それに次の研究が決まっているなら言ってくれ。それにも出来る限り協力するから」
そこで藍染は真面目な顔をした。
「僕らは、進歩しなければならないからね」
そう言われて、浦原もまた真面目な顔をした。進歩。もう進みようもないところまで、自分達も世界もきているのではないかと思うときが浦原にはある。停滞のあとにくるのは緩やかな崩壊だ。藍染もまた、そう思っているだろうと確信に近く浦原は思う。
目の前の藍染は真面目に、こちらを見ていた。
浦原は眼を伏せて、小さく笑う。笑うしかできない。
「……お願いしますよ、藍染サン」
鳥の子色の髪が浦原の顔半分を覆う。藍染は浦原の表情を窺うことはできない。ただ口元の小さな笑みが、浦原が自分とは異なる場所に立っていることを物語っていた。藍染もまた小さく笑う。暗く、秘やかな宣戦布告を含めて。
「こちらこそ、頼んだよ。浦原」
そう言ってこちらに背を向ける藍染を、浦原は黙って見ていた。藍染は扉を開け、そして振り返る。薄暗い廊下の壁を背にして藍染は揺らぎもせずに立っている。
「では、今日はこれで失礼するよ」
管や機材が溢れるなかに、唯一、確かな輪郭で浦原が立っているのを藍染は両目で捉えた。
「ええ、わざわざ、ありがとうございました」
閉じられる扉に、それぞれの姿がゆっくりと隠されていく。
そして小さな音をたてて、扉は閉ざされた。
技術局の壁に並ぶ窓の一つに、浦原の姿があった。開かない窓から外を眺める浦原は、ひどく真面目な顔をしている。
その下の玄関が重い音を立てて開かれる。そこから藍染がゆったりと姿を現した。藍染は門へ向かって羽織を優雅に揺らして歩く。そして門の一歩手前で立ち止まり、振り返って建物を見上げた。
その視線の先には浦原があった。
浦原も藍染を見下ろしていた。
お互いに身動ぎもせずにそうしていた。
やがて藍染は軽く微笑み、そして視線を前に戻した。そしてゆっくりと、ゆっくりと門から出ていった。浦原は遠くなる五の字を見送っていた。その白い羽織姿が見えなくなるまで、見送っていた。
こちらは、闇系御題の05と23、そして27と密接に繋がっている話です。これはほぼ全て書き直して仕上げました。こっそり尊敬している素敵サイト様のお話で、やはり浦原と藍染の話があったのですが、似たようなシチュエーションを考えていたのでそちらに思い切り引きずられてしまったのです。あまりに素敵なお話なので、影響がすごい大きかったですね。書いても書いても似てしまうので、これは三ヶ月くらい書いていました。最終的には似ないで書き上げられたのかと問われると唸って逃亡してしまうのですが、でも構成や印象は異なるかなあと仄かに思っていますていうか願っています。こういう問題は難しいのですが、物語の中でかなり大事な部分だったので外すことは考えませんでした。自分の文章と思えるもので書けば大丈夫だと言い聞かせて書きました。
藍染さんと浦原さんは一度、決裂していると思っています。この決裂が物語を動かしたのでしょう。浦原さんは、藍染さんの暗い顔に気付いていたと思います。
御題目次
11月25日(日)
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