ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■24 断頭台
 大前田が肩を落として盛大に溜息をついた。そして諦めたように礼をした。
「準備してきますよ、俺が」
「うむ」
 砕蜂は誤魔化すように鷹揚に頷いた。けれど、面倒くせえなあと呟きつつ扉を開けようとする背中を見て、口を開いた。
「大前田……礼を言う」
「……当然のことっスよ。俺は砕蜂隊長の副官なんスから」
 扉が閉まると、砕蜂は膝を抱えた。涙はあの時に捨てていたが、それでも何か胸の奥が締め付けられるように思った。
 血の臭いを薄めていくその花の香りを、胸一杯に砕蜂は吸い込んだ。


 扉を開けて大前田が入ってきたとき、昔のことを思い出していた砕蜂は一瞬だけ困惑し、そして微かに笑った。
「どうしたんスか、隊長。変っスよ」
「上司に向かって何て言い草だ」
 砕蜂は立ち上がると同時に裏拳を繰り出したが、大前田はそれを上体を仰け反らせて紙一重で避けた。そこへ砕蜂が一歩踏み出すと、回し蹴りを顎めがけて繰り出すが、大前田が一歩引くことでそれを回避する。
 二人とも向き合って大きく息を付いた。
「鍛錬はできているようだな」
「……いい加減できるようになるっつうの」
 満足げに言う砕蜂に、大前田は諦めたように、疲れてるんじゃねえのかよ、と呟いた。
「まあいいっス。風呂の準備できましたよ」
「うむ。ご苦労だった」
 何事もなかったようにお互いに頷き、そこで大前田は砕蜂の顔に目をとめた。
「ちょっと待って下さい、隊長。いいスか」
 砕蜂が動きを止めると、大前田は懐から手拭いを取り出してそれを右手に持ち、左手で軽く砕蜂の顎を持って、そして頬を手拭いで拭った。
「あああ、もうカラッカラに乾いてんじゃないスか」
「これから風呂に入るのだから別にいいだろう」
「こんなもん、とっとと落とすに越したことはないでしょうが。ああ面倒くせえ。今夜は浴びてねえと思ったのに」
 面倒くせえなあと最早口癖となったそれを呟いて、大前田は給湯室で手拭いを湿らせてくる。おとなしく動かないままそれを待っていた砕蜂は、文句を言いながら丁寧に血の跡を拭う大前田を見上げた。
「貴様、私を恐れたことはないのか。人を殺す役目の、私を」
 大前田は億劫そうな口調で答える。
「別に。ないっス」
「私は邪魔だと判断したら、貴様でも殺すぞ」
「そうっスね。そうなったら単に俺がそれまでの奴だったってだけっスから」
「……貴様が裏切っても、殺すぞ」
「隊長についていくっスよ。どこまでも、俺も、他の隊員も」
「そうか」
「そうっス」
 よし落ちたと大前田が手を離し、砕蜂は血の跡のあった辺りを指で触れた。そこはもう何の違和感もなくただ自分の肌があり、微かに湿っていた。大前田は器を片づけ始めていて、砕蜂は扉に向かう。そして振り返り、
「大前田。礼を言う」
と言った。大前田は顔だけ上げた。
「当然っスよ。副官なんスから」
 大前田の返事に砕蜂は頷いた。







 二番隊第二弾です。ええと、生け贄の話を受けて、二人きりのときはどんな感じかしらと書いてみました。任務は夜だろうから、まあ夜のお出迎えってことで……どこもかしこも甘くならないようですよこのコンビは。
 いやホント、多分副隊長としては忙しい隊だと思いますよ。よくやってるハズ。きっとそう。
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11月24日(土)
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