ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■地上の縁からのぞき込むと深遠の青が底もなく 1
 乱菊を除く三人の少女が微かに警戒した表情を向け、それを見てギンは込み上げる笑いを抑えることなく、楽しそうに笑った。一人、乱菊だけが堂々として、こちらを見ている。その様子にギンは僅かに表情を消し、再び笑みを浮かべた。
「いいから、さっさと提出してよ。出していないの、あんただけなの」
 乱菊が普段より少し突き放した言い方でギンに告げる。これまでの笑みを浮かべそうになり、それを堪えて、ギンはへらりと笑った。
「それは堪忍なあ。ああ、でももうすぐ終わりそうやね。もう仲良うなりはったんか」
「そうよ」
 平然と答える乱菊の袖をスミレが引っ張っている。ツワブキはギンを睨みつけ、リンドウは静かな眼で乱菊とギンを交互に見やっている。乱菊は三人を気にすることなく、ギンを見つめている。その三人の様子を見て、ギンはほっと息を付いた。
「そら、良かったなあ」
 四人を見て、思わず口をついて言葉が出て、ギンは慌てて表情をより軽く軽く、軽薄にした。そして片方の口角だけを上げて、笑う。
 その言葉に三人の少女は狐に摘まれたような表情を浮かべ、乱菊だけは小さく、ギンにだけ分かるくらいに微笑んだ。そして、きゅっと口元を引き締めると、乱菊は凛とした声で、
「羨ましがっていないで、さっさと提出物出して。そうすれば友達でも何でも作りに行けるでしょ」
と言い放った。その口調は固く少しだけぎこちなく無理をしているようで、聞き慣れないその言葉遣いにギンは楽しそうに眼を細めた。
「あんた、寮でしょ。寮生が沢山いるんだから、仲良くしてきなよ」
「皆、ボクを怖がっとるよ」
「あんたの愛想が悪いからでしょ」
「ボクえらい笑うとるやん」
「そんな胡散臭い笑いなんか信用できないんじゃないの」
「ひっどい言い草やなあ。なんでそない機嫌悪うしてはるんや」
「機嫌悪いに決まってるでしょ。首席でもないのに級長やらされてんのよ、あたし。とにかく、さっさと出しな。もうあとあんたの提出物をまとめれば、あたし達も寮に帰れるの」
「冷たいこと言わはるお人やなあ。自分よければそれでええんかい」
「人に級長を押しつけた首席が何言ってるの。それに、あたし、ちゃんと言ってるじゃない」
 乱菊が、ギンの目の前に人差し指を突き出して、左右に振った。
「早く帰って、友達作れって。親切で言ってるの、あたしは」
 そう言う乱菊の眼は真剣で、ギンはその眼の訴えることを理解した。ギンはそれが嬉しくて仕方なく、緩む顔を隠すようにただへらりへらりと楽しそうにするしかない。
 そこに、あっけにとられていたスミレがおずおずと、ギンの顔を覗き込むようにしてきた。ギンがそちらを向くとびくりとして、それでも視線を外さずに、
「あの……もしお友達ができなかったら、私がお友達になりましょうか」
と言った。
 ギンも、乱菊も目を見張ってスミレを見つめる。スミレは眉を寄せて、困ったような怯えたような表情をした。
「だって……乱菊ちゃんが羨ましいのでは、ないのですか」
 スミレの解釈に、ギンは口元だけで笑った。
「ありがたいなあ……ほな、迷惑かけんようするさかい、よろしゅう頼みますわ」
「あ、はい。よろしくお願いします」
 まだ怯えつつも頭を下げ、名乗りあう二人を、残りの三人は驚いて見つめていた。しかし、まずツワブキが大きく溜息をついて、ギンを振り返る。
「仕方ないなあ。言っとくけど、まだあんたのこと信用はしてないよ」
「そらそうですやろ。でもまあ、よろしゅうな」
 自己紹介をするツワブキを見て、リンドウがギンを見上げた。ギンも彼女を見て、へらりと笑う。先の二人と違ってリンドウの目はまだかなり警戒していたし、それを押し隠していた。その目を見てギンは感心したように頷き、名乗りあった。
 三人とそれぞれ挨拶を交わし終えて、ギンは乱菊を振り返る。乱菊はどこかほっとしたような、力が抜けた表情をしていたが、すぐにきっと眼に力を込めた。
「級長さんは、どうですやろ」
「……あんたがきちんと提出物を出して、ついでに級長もやってくれたら、考えておくわね」
「あ、ほんなら未来永劫仲良うできませんなあ」

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06月03日(土)
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