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G*R
by K・カヲル
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■『女性死神協会 会議中02番外編(後半)』
「美味しかったのはチョコ! チョコレートだから! ……あたしも行かなきゃ! そう! うん! 行こう、とにかく」
と言い聞かせ、甘い香りの漂う部屋を飛び出していった。
(そのころの八番隊給湯室)
「……あら? あららら? ……甘くない」
ようやく滑らかに溶けたチョコレートを一舐めして、七緒は首を傾げた。もう一回、とボウルの端についたチョコレートを指ですくって口の中に入れる。甘くない。ビターなんてどころではなく、全く甘くない。
七緒は慌てて、チョコレートの入っていた袋を手に取った。製菓用、と書かれた袋に僅かに残っていたチョコレートの欠片を口の中に入れる。
甘くない。
「もしかして……製菓用って、お砂糖が入ってないの?」
(十番隊・給湯室)
執務室から戻ってきた乱菊が目にしたのは、甘い香りの漂う給湯室の床で悶絶しているギンの姿だった。
「……明け方の他隊の部屋で何をしておられるのでしょうか? 市丸隊長?」
閉じた扉に寄りかかり、冷ややかな目で見下ろす乱菊を、歪んだ顔をしたギンが見上げる。そして一言、
「み、水」
と嗄れた声で言った。乱菊はわざとらしい溜息をついてみせる。
「……勝手に召し上がりましたね」
「そ、そんなこと言わんといて。何入っとるん、これ。喉、痛ぁ」
「罰が当たったんですよ」
そう言いながら、乱菊は戸棚から客用の湯飲みを取り出すと水道水を乱暴に汲む。それをギンに差し出すと、ギンは一気に飲み干した。
「はい、口直しにどうぞ」
続けて乱菊は、作業台に散らばっていた残りのチョコレートの欠片を差し出す。ギンはそれも一口で食べ、ほうと息を吐いた。ようやく乱菊は苦笑して、膝を抱えるようにして座り、ギンと目線を合わせた。
「スピリタス入りのボンボンを召し上がったんですよ。隊長は」
「……うわ、最悪やないの」
床に座り込んだまま、ギンもまた苦笑する。そして、ちょいと首を傾げた。
「どうして、敬語使うとるん…………乱菊?」
そう言われて、乱菊は少し困ったような顔をして、そして笑った。
「あたしだと、隊長クラスに霊圧を消されたら分からないからよ。実際に、あんたが来ていたことにも気づけなかったしね……ギン」
壊れものを扱うように丁寧に名を呼ばれ、ギンは味わうように目を閉じ、すぐに目を開けて笑う。
「声聞こえるような距離には誰もおらへんよ。それにボク、完全に霊圧消しとるさかい、ヒラの死神には気付かれへん」
目の前で揺れる一房の山吹色の髪を指でくるくると遊ぶように摘み、ギンは柔らかい声で言う。ひそめられた声は狭い給湯室ですら響かない。ただ、乱菊の耳にだけ届くから、乱菊はくすぐったそうに小首を傾げる。
「あんたが言うなら、大丈夫でしょうね」
髪を遊ばれたままにして、乱菊は笑う。
「で。どうしたの? 夜中を通り越して、もう明け方よ?」
「ちょい眠れんかったんや。お月さん綺麗やったし、ふらふらしとったんやけど。色んな隊からええ匂いするし、こっち来てみたらこっちもええ匂いするやろ。乱菊の霊圧もあったさかい、こっそり」
「あたしの霊圧の方じゃなくて、匂いのする方へ来てみたわけね」
ギンの片頬を摘み、乱菊はいたずらした子を問いつめるように笑みの形に細められた目で覗き込む。ギンは頬を伸ばされたまま、
「はあ。そうなんやへろね」
と言って、肩をすくめた。
「そういうことしてるから、スピリタスボンボンを食べちゃうのよ」
「らってええにおいしたんらほん」
「何言ってるんだか分からないわよ」
「せやったらてぇはらして」
「はいはい」
乱菊のほっそりとした指が離れ、ギンは少しだけ名残惜しそうな顔をするが、手で頬をさする。
「痛ぁ。乱菊、力入れすぎや」
「つまみ食いするからよ」
「食べたん、スピリタスやないの。罰ゲームの景品かなんかやろか?」
「ああ、あれ? 極秘任務」
しれっと言う乱菊を、ギンは疑わしそうに見上げた。
「協会やろ?」
「さあ?」
「怖いわぁ。相変わらず」
ギンは苦笑して、再び乱菊の髪を手に取る。されるがままに、乱菊もまた苦笑した。
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02月20日(水)
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