ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■地上の縁からのぞき込むと深遠の青が底もなく 1
 自己紹介も兼ねたお喋りをしながら、誰もいなくなった教室で四人は提出物の仕分けをしていた。静かな空気を高い笑い声が揺らす。
「私は瀞霊廷で育ったの」
 スミレは小さな声で言った。
「といっても、暮らしは普通なの。お父様は早くに亡くなってしまわれたから」
「そうなんだ」
 ツワブキは頷いた。
「あたしは南流魂街の二地区の出身。今朝、寮に入ったばかりだよ」
「遅かったのね」
 リンドウが尋ねると、ツワブキは照れくさそうに頭を掻いた。
「一緒に暮らしていた奴らがいるんだけどね。五人で暮らしてたの。あたしだけ食べ物必要だから出ていかないと迷惑かけちゃうから死神になろうと考えたんだけど、でも奴らとちょっと離れがたくって」
「ずっと一緒だったのね」
「うん。休みになったら会いに行けるけど、しばらくは会えないから」
 そう言って笑うツワブキを眩しそうに眺めて、リンドウは話した。
「私は北流魂街の六十二地区から来たの」
 その言葉に乱菊も、他の二人も驚いて目を見張った。その様子に小首を傾げるリンドウは、貴族出身と言ってもおかしくないたおやかさで鈴が転がるような声で笑う。
「そんな治安が悪いわけでもないのよ。北にあるせいか、ちょっと荒んでいるけど」
 そう言って口元に添えられた指先の爪は、きれいに淡い紅色に染められていた。しかしその形は歪み、酷く短い。それに視線を向くと、リンドウは少しだけ眉を顰めて、苦く笑った。
「まあでも……治安がものすごく良いわけでもないから、やっぱり色々とあってね。爪の形が変になったまま治らないから、きちんと染めるようにしてるの……やっぱり、目立っちゃうかな」
 少しだけ目を伏せたリンドウの手を、ツワブキが握りしめた。
「ううん、そんなことない。淡い色で、綺麗だよ。あたしなんか、そんな女の子らしいことしても似合わないもん。ほら、ごつくって」
 背が高く、骨太らしいツワブキの手は大きい。リンドウの目の前で自分の手を開くツワブキに、リンドウは微笑んだ。乱菊もスミレも続けて笑う。
「乱ちゃんは、どこの出身なの」
 微笑んだまま、リンドウが乱菊の方を振り向いた。一瞬、あの夜のギンの顔を思い出して乱菊は躊躇したが、正直に、
「西流魂街の八十地区よ」
と言った。三人が口を開けたまま、動きを止めた。
「……だから、乱菊ちゃん、そんなに強いんだあ」
 スミレがしみじみと呟くと、他の二人も張り子の虎のように頷く。
「そんな驚くことじゃないよ。だいたいそんな強くもない」
「ううん、乱、気づいてないの。あの市丸って奴ほどじゃないけど、入試の時に、みんな乱の実技に驚いていたよ」
 ツワブキはそう言って、思い出すように眼を天井に向けた。
「霊圧解放や調節も、乱は皆より一段階は上にいると思う。だから次席なんだと思うよ」
 ツワブキの言葉に乱菊は初めて気づいたというように頷いた。
「ああ、そっか。あたし、筆記試験は散々だったから、おかしいなって思ってたんだよね」
「そうなの」
「だってあたし、漢字がまだいまいち読めないから」
「え、そうなの」
 驚くリンドウに、乱菊も驚いて尋ねる。
「同じような地区の出なのに、文字読めるの」
「だって私、尸魂界に来る前に文字を知っていたから」
「ずるい」
 乱菊はふて腐れて、机に頬杖をつく。その頭をスミレがあやすように撫でた。これまで長い間、自分の頭を撫でていた手とは全く異なる感触に、乱菊は寂しげな表情をして、そしてすぐに消した。
「死んだとき、小さかったからか。それとも単に身分かな」
「私は死んだのが結構大きくなってからだから、仕方ないわよ、乱ちゃん」
「まあ、しかたないよねえ」
 そのとき、教室の廊下のざわめく気配の中に、乱菊にとっては馴染みのものが混じり込んだ。乱菊は無意識にぴくりと反応する。
 教室の扉が開いて、ギンが入ってきた。


「おやまあ、えらい別嬪さんが揃って何してはるんや」

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06月03日(土)
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