ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■ぼくらはただそうやって世界を手にした 8
「俺ら、学校を途中で飛びだしてきてるから、あんまり教えられることねえんだよな。本当はあるんだよ、色々。鬼道とか縛道とか、術みたいなもんが。でも授業はさぼっていたから、覚えてねえ」
「学校?」
 思いがけない言葉に、ギンは珍しく驚いた。死神なんてここでは見ることはほとんどないから考えることもなかったが、学校というものがあるのか。
 男達は興味を示したギンを見て、更に説明を重ねる。
「死神になるには学校に入ることが近道なんだよ。そこでいろいろ教われるし、生活も安定できる。卒業できれば死神になれる。死神になれば暮らしは楽になるぜ。少なくとも、ここよりかはな。人も殺さずにすむし、霊力は活用できるし」
「中央に学校がある。年に一度、試験があるはずだぜ。お前なら、もう受かるんじゃねえかな。こんな坊主の合格者は見たことねえけど、さっきの感触だといけそうだよな」
「乱菊も一緒に受かるやろか」
 ギンは真剣に考えてみた。地区を移動することについては前々から考えていた。ただ、体力の劣る乱菊が長距離の移動……かなりの危険を伴う移動に耐えられるかわからないので、口に出してはいなかった。暴漢はどうにかなっても、渓谷や大河はどうにもならない。うまく移動できたとしても余所者ができる仕事なんてかっぱらいくらいだろう。しかし、食い扶持を稼げるなら、そして乱菊に安全な暮らしをさせてやれるのなら、人を殺さずに暮らせるなら、やってみる価値はあるように思えた。
 けれど、巨体の男が、
「あの嬢ちゃんか。感じる限りではまだ無理だと思うぞ」
と言ったその一言で、その考えは一蹴された。
「ならええわ。ここで暮らしていけるし」
 あっさりと言い放つギンを見て、長身の男は呆れたように笑った。
「あのお嬢ちゃんがお前の生活の中心か。確かにかわいいもんな」
「一番のべっぴんさんや」
「自慢してる、自慢してるよこいつ」
 二人の用心棒は、ギンの自慢げな顔に笑う。先程までは抜け目のない表情でいた子供が急に年相応の顔を見せたからなのだが、ギンは分からずにきょとんとした。
「ああまあ、あんな嬢ちゃんなら守らないとならんわな」
「お前、なんか武器は持ってるのか。見たところ丸腰なんだけど」
「持っとらん。襲ってきた男の奪うのは乱菊気持ち悪そうにしてはるからやらんし、小刀とか欲しいんやけど、盗むんもちょっとなあ。なくてもなんとかなるし」
「お前、本当にお嬢ちゃんが中心なのな」
 長身の男がおかしそうに笑う。そして腰にさしていた刀を外して、ギンの前に差し出した。
「これが死神の持っている刀だ。自分の霊力でできている」
 ギンは鞘をそっと触ってみた。確かに硬く、触れるものだ。
「霊力て、これ触れるやん」
「あー、なんて言うんだっけ」
「具象化だ、具象化。えーと、まあぶっちゃけて言うと霊力で作るんだよ」
「そのままじゃねえか」
 言い争う男達を放っておいて、ギンは刀を取り上げた。確かに、なにか波動を感じる。
「てことはや、ボクも作れるんか?」
 顔を上げてそう尋ねると、男達は顔を見合わせて、唸った。
「一から作ったことなんてないしなあ。これ配給品だし」
「なんつうか、これは種みたいなもんなんだよな。これに霊力を送れるくらいになって初めて、自分だけの刀になるっつうか」
「種ないと無理なんか」
「難しいと思うぞ。お前、まだ死神じゃねえしなあ」
「……あ、でもあれ、あれがあるじゃねえか」
 考え込んでいた巨体の男が立ち上がり、馬車の方へと近づくと中へ向かって何か声をかけた。文句らしき高い声が聞こえたが、戸が細く開かれて何かが差し出される。それを男は受け取って、ギンに向かって放り投げた。
 受け取ってみると、刃のない柄だった。
「学校を出るときにかっぱらってきた。ひびが入っていたから構わねえだろうって思ってよ。そしたら、すぐに折れたよ。やっぱり」
「ああこれか。確かに、できるかもしれないな。霊力さえ強ければ」
「何すんのや」
「これを刀にするのさ。霊力を込めて」
 長身の男はギンを立ち上がらせると、自分もその前に立って自分の刀を引き抜いた。すらりと音がして、白刃が光る。

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01月19日(水)
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