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G*R
by K・カヲル
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■ぼくらはただそうやって世界を手にした 5
 ギンが一歩進むと、その度に血の跳ねる音がする。男達は何も答えずに引きつった顔をしている。まともに動けないのか、呻き声をあげて壁にへばりつくだけだ。ギンの放出する霊圧をくらって動けないのかもしれない。ギンは薄く笑った。なんて滑稽な奴らなのだろうかと思う。野蛮に力を奮い、人を無意味に無差別に殺しても、自分より強い者の前ではまるで虫のようだ。虫の身分で、かわいいかわいい乱菊を傷つけたのか。
「ええ身分やないか。あァ?」
 虫を殺して何が悪い。
 勢いよく一歩踏み出して、ギンは右手を横に薙ぎ払った。その瞬間、壁に張り付いていた三人の男達の胴が切断される。面が見えたかと思うと、次の瞬間には血が噴き出していた。

 乱菊は瞬きもできずにいた。
 血飛沫の中で、ギンの銀髪が窓の隙間から差し込む月光に輝いている。
 切れそうな霊圧が風のようにギンの周囲に渦巻き、その中でギンは風を従える王のように堂々として恐ろしく、そして綺麗だ。
 乱菊はくらくらして倒れそうになる体を必死に支えながら、目を閉じないようにこの美しい惨劇を見続けていた。これは逃げ遅れた乱菊のために行われていることだ。目を逸らしてはいけない。目を瞑ってはいけない。ギンが浴びている血の半分は、自分が浴びるべきものだ。
 ふと外に騒々しい喚き声と足音がして、男達が小屋に足を踏み入れた。一歩入ったところで、部屋に充満する圧力に動かなくなる。新手の奴らかと乱菊は慌てたが、彼らは乱菊達の住処を襲った四人の男達だった。
「なんだ、こりゃあ……」
 最初に足を踏み入れた男が絞り出すように声を出す。
「なんでこんなことになってんだよ……おい」
 生き残っている霊力のある男が何か言おうとするが、声が出ない。
 ギンが振り向いた。
「なんや、アンタら。あのまま逃げとったら助かったんにな。ボク、ちょいと動けんようにしただけやろ」
 静かな口調は、凍るように冷たい。ギンが右手を頭上にあげた。
「人が気ぃ遣っとんのに、阿呆やなあ」
 右手が勢いよく振り下ろされると、そこから霊力が勢いよくしなって伸びていった。その切っ先は入り口の男に刺さり、男は勢いよく外へと飛んでいく。外で連鎖して叫び声が聞こえて、すぐに止んだ。伸びた霊力はすぐにギンの右手に戻り、ギンは無表情のまま右手を振って血を払う。
 乱菊の目の前で、動けるようになったのか霊力のある男が這い蹲ったまま扉に向かっていた。ギンが男に視線をやる。射殺すようなそれに、一身に向けられた霊圧に、男の動きは止まった。それでも抵抗しているのか、体が細かく震えている。
「逃げるんか? できるて、思うとるんか?」
 おめでたいなあ、とギンは呟き、男にゆっくりと近づき、横に立つと、男の後頭部を見下ろして訊いた。
「まだ他に仲間おるんか?」
 男が首を横に振る。
「他のおっはんとか、みんな潰したんか?」
 男が首を縦に振る。ギンが溜息をついた。
「よう分かったわ。もう、ええよ」
 ギンが無造作に右手を突き出すと、集められていた霊圧が男の背中を貫いた。男の体が引きつり痙攣する。ギンが右手を引き抜くとその穴から血が噴き出し、体はそのまま血溜まりに潰れ、動きを完全に止めた。

 痛いくらいの静寂がおりた。

 霊圧の嵐は消え、ギンが血塗れになってそこに立っている。
「ギン……」
 乱菊がそっと呼ぶと、ギンは弾かれたようにそちらを向いた。その表情にあの殺意はどこにもなくて、疲れ切った、呆然とした、そんな顔をしていた。
「乱菊、怪我ないんか? 大丈夫……」
 ギンは慌てて乱菊に駆け寄り、はだけられた肩を見て眉を顰めた。着物を直そうと手を伸ばして、自分の手が血塗れであることに気づいて引っ込める。
「ギン…?」
「乱菊……あんな……」
 こんな手で触れたら乱菊が汚れてしまう。こんな手では汚れてしまう。こんな自分では、綺麗な乱菊を汚してしまう。
 躊躇しているギンを見て、乱菊は手を伸ばした。
「あかん、乱菊。汚れてしまうわ」
「何言ってるのよ……」

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01月10日(月)
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