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G*R
by K・カヲル
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■『女性死神協会 会議中02番外編(後半)』
「お酒を入れてみても、全然、なんかそんな気分にはならないそうで……どうしたらいいのか……」
 荻堂が反応を示さないので、勇音の声はどんどん小さくなっていく。体も声とともに縮こまり、勇音は胸の前で両手を組み合わせて俯いた。
 その様子を目を細めて眺めていた荻堂が、事も無げに言った。
「簡単ですよ」
「……え?」
 顔を上げると、荻堂は普段通りの淡々とした表情で言う。
「二人で一緒に食べられるような、いえ、食べた方が良いものにすればいいんですよ。二人きりで食べれば、いやでも口説く雰囲気になるでしょう。食べ方を教えないとよく分からないものや、一人で食べるのはイマイチなものにすれば」
「あ……ああ、ああ! なるほど! 思いつきました!」
 勇音の顔がみるまに明るくなった。ぴんと背を伸ばし、勇音は荻堂に明るい笑みを向ける。
「ありがとうございます! 思いつきました! しかも二つも。あ、荻堂八席、すぐに作るので試食してくれませんか。お願いします!」
 荻堂に返事をする間も与えず、勇音はボウルを片手に動き始める。荻堂はそれを眺めていたが、やがて諦めたように壁により掛かった。

 最後の試作はフォンダンショコラとチョコレートフォンドュになった。ぼんやりと待ち呆けていた荻堂にそれらを食べてもらう。
「……そんなに見つめられるとさす」
「どうですか?」
 軽口を真面目に遮られ、荻堂はくるりと視線を回すと、勇音を見つめた。
「とても美味しいです。そして発想もよいかと思います。どちらも食べ方がすぐにピンときませんので、一緒に食べようという話になるでしょう。これならば口説く、という目的に叶っていると思います」
 身じろぎもせずに聞いていた勇音は、ほうと相好を崩した。明け方まで頑張ったかいもあろうかというものだ。急に脚の疲れを感じ始めるが、ほっとした安心の方が勝っていた。
 その様子を眺めていた荻堂の目がつうと細くなった。
「……このフォンドュというものはそれほど熱くはないのですね」
「あ、はい、そうですね。少し冷めてしまっていますが、まあそんな高温でなくとも」
 勇音は手を伸ばしてとろけたチョコレートの入った容器に触れる。と、その手を急に荻堂の手が握りしめた。
 何が起きているのか分からなかった。
 勇音が状況を把握していない間に、荻堂はいきなり、勇音の指先を溶けたチョコレートに突っ込んだ。瞬時に戸惑いが驚きに変わるが、どちらにしても勇音は何も言えずに呆然とする。
「熱いですか」
 さらりと表情を変えずに言う荻堂に、勇音はただ首を横に振ることしかできない。すると、荻堂は、小さくそうですかと呟くなり、チョコレートのついた勇音の指先をぺろりと舐めた。
「……っ!」
 ほんの一瞬。
 それはほんの一瞬、だが確かに指先に人の舌の柔らかさと熱を感じて、勇音は硬直する。まだ手を離してはくれない目の前の人は、風のない湖面のような、何もかも沈めて浮かばせない表情で、だから何も読みとれない。
 言葉が形にならない。勇音は懸命に口を開けるが、言葉は出てこない。勇音は空気の足りない魚のように口を動かす。
 すると、荻堂は小さく息を吐いて、
「……とまあ、こうして指にでもチョコレートをつけて、あたしを食べて、とでも言ってみてはいかがでしょうか」
と淡々と言った。
「……は?」
「口説きの一環で。まあ微笑ましいものだとは思いますけどね」
 手はいまだに握られたままで、勇音は呆然としたまま壊れた人形のように頷いた。しんと室内が静まりかえる。一瞬のそれが重く感じたそのとき、遠くのざわめきが大きくなった。荻堂がそちらを振り返る。
「急患かもしれませんね。あちらに向かいます。副隊長」
 ようやく手を離し、立ち上がった荻堂が真っ直ぐに勇音を見た。勇音はまだ固まったまま、その視線を受け止める。
「ごちそうさまでした。美味しかったですよ」
 荻堂はそう言って、くるりと背を向けて部屋を出ていく。勇音はその背を見送り、そして自分の指先に目をやった。指先にはまだ少しだけ、チョコレートが残っている。指先が急に熱くなったように感じ、勇音は慌てて頬を叩き始める。そして立ち上がると、

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02月20日(水)
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