ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■『女性死神協会 会議中02』
 やちるが尋ねるが、七緒は涙目で首を横に振るだけだ。ネムがくるりと身をひるがえして湯飲みで水を持ってくる。七緒は湯飲みを受け取ると一息で水を飲み干した。そして、がん、と湯飲みを割らんばかりに机に叩きつけ、七緒は乱菊を涙目で睨み付ける。
「何、を、入れたん、ですか!?」
「えーと、やちるがリキュールで、後がウイスキーに…………ああ、七緒が食べたのはスピリタスのボンボンね」
 名を聞いて皆は首を傾げる。乱菊もまた首を傾げると、ああ、と笑ってみせる。
「ウオッカよ。えーと、アルコール度数が96度の」
「きゅうじゅうろく!?」
 七緒と勇音が同時に声を上げた。やちるがまだ首を傾げている。砕蜂がやちるに、
「普通に飲んでいる日本酒は、決まってはおらぬが、だいたい15〜20前半が多いだろうな」
と説明した。やちるが、七緒と勇音の驚きを理解したのか、頷く。
「食べられるものをと申し上げていたじゃないですか!」
 七緒は赤い顔で抗議する。乱菊はきょとんとした後、首を傾げた。
「でも、男を口説けるチョコレートでしょ?」
「そうですよ!」
「これを食べさせて眠らせちゃえば、ほら、色々と既成事実をつく」
「待ちなさーいっ!」
 乱菊の口を七緒が押さえ込んだ。もう片方の手でぎりぎりと乱菊の肩を掴んでいる。七緒の眼は座っていて、乱菊は押さえ込まれながら、七緒に笑いかけようとした。
「ば、ばばぼちゃ」
「もう何も言いませんね言うことはありませんね言わないわね! はい! 乱菊さんの試食終了ですっ!」


「はい! 次の方!」
「は、はい。私です」
 まだほんのりと赤い顔をした七緒に睨まれて、勇音はびくっと体を震わせつつ風呂敷包みを取り出した。江戸紫の風呂敷をとき、現れた箱を開ける。皆、勇音を取り囲んで覗き込み、ほうと感嘆の溜息をついた。箱の中には掌に乗るくらいの陶器のカップがあり、チョコレート色の焼き菓子が入っている。甘い香りがふわりと立ち上った。
「フォンダンショコラです。暖めて食べるものなので、冬だし、いいかなって」
「暖めて食べるのですね」
 七緒の言葉に、ネムが立ち上がると即座に姿を消した。そしてすぐに極超短波小炉(要するに電子レンジ)を抱えて戻ってくる。それを設置して、勇音はカップを入れていき、スイッチを入れた。やちるが小さな匙を人数分用意して待っている。濃い甘い匂いが周囲に立ちこめた。
 ちん、と間の抜けた音を極超短波小炉(要するに電子レンジ)が立てた。勇音が扉を開ける。熱っ、と呟きながらも勇音は手際よく机にカップを並べた。やちるが匙をそれぞれに手渡す。
「いただきます」
 全員が一斉に匙を口に運ぶ。一瞬だけ沈黙が流れ、全員が同じ、柔らかい顔をした。
「……おいしーい! 勇音ちゃん、すごくおいしいよこれ」
「これ、良いじゃない。すっごくおいしい。作り方も簡単なのね」
「うむ、これは良いな」
「はい、そう思います」
「ええほんとに、とても好き。紅茶が欲しいですね」
 勇音は皆の感想を聞きながら照れくさそうに背中を小さくして笑う。そして、箱の中からもう一つ、別の容器を取りだした。とろけたチョコレートを口に運ぶ手を止めないまま、全員が再び覗き込む。容器の中にはチョコレートが固まっている。
「あの、それで、もう一つ暖かいもので、チョコレートフォンドュです。フォンダンショコラが難しい人の場合、こちらならチョコと牛乳を一緒に加熱するだけで作れるので。火にかけて、溶けたところに果物とかをつけて食べます」
「あ、それもおいしそう」
 想像しているのか乱菊が眼を閉じて微笑んだ。
「そして、これら二つは口説くという点でも良いと思います。贈るときに、こうして食べるのよって言って一緒に食べればいいかなって考えました。特にチョコレートフォンドュの方は二人で食べた方が楽しいと思いますし」
「見事な作戦だ」
 砕蜂が匙をくわえて頷いた。
「それに、あの、そのですね……えと」
「どうしましたか。どうぞ仰って下さい」
 口ごもり始めた勇音を七緒が優しく促す。勇音は頬を赤らめて、両手を胸の前で組み合わせて口を開いた。

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02月18日(月)
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