ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■雰囲気的な10の御題:哀
ネムの肩の傷は、刀傷にしては不自然にぐしゃぐしゃになっている。草履の跡もあることから、これは”父親”に踏みにじられたものだろう。いつものこととはいえ、気分の良いものではない。皮を丁寧に剥がし、筋肉繊維を新品に取り替えながら阿近は囁く。
しかしネムは、微笑むように口角を僅かに引き上げた。
「いいえ。大丈夫です……いつもお手数をおかけして申し訳ありません」
「……そういうことじゃないんですよ」
「私はいいのです。父がそれを私に求めているなら、もう、それで」
ネムは満足げに見えた。阿近はそれ以上何も言えず、ただ傷の修復に集中する。お互いがそれでいいのなら、他人が何を言えるだろう。手を差しのべてもその手を取らないなら、それ以上なにができるだろうか。
04.記憶の断片
ようやく見つけた『妹』を見たときに、白哉は脳天を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。
爺やの傍らで不安げな面もちでこちらを見上げるその少女に気づかれぬよう、白哉は無表情を装って静かに息を吐く。視線は少女に定まったまま動かすことすらできない。大きな目、艶やかな黒髪、細い体躯。一年前に腕の中から消えた、あの姿に酷似した少女は、暗い室内で身じろぎもせずに白哉を見ていた。
私と同じ姿をしているはずなのです。
儚げな彼の人はそう呟くように言うと、白哉の記憶の中で消え入りそうに微笑んだ。
父と母が申しておりました。私の赤ん坊の頃にそっくりだと。ですからおそらく、私と同じ姿に成長していると思うのです。この姿が唯一、私に残された妹との繋がりなのでございます。
白哉は小さく頷いた。
目の前の少女は彼の人に瓜二つだった。
ただ一つ、異なると感じられたのは眼の力。不安げな色をたたえながらもこちらに向けられる眼には、彼の人にはない力があった。その違いに気づいて、白哉はもう一度、大きく息をつく。ようやく目を伏せて、視線を外した。
「……そなたに話がある」
目を伏せたまま、白哉は低く呟いた。
05.深すぎる想い
真っ白な壁に鮮やかすぎるほどの紅い血を大量に流し、飛び散らせ、まるで赤々と咲いた花のような中に動かなくなった藍染隊長の体は、あった。
乱菊は雛森を押さえつつ、そっとその体を見上げる。ずいぶんと高い位置に放置されていてよくは見えないが、あの髪の色も体格も、どう見ても藍染隊長としか思えなかった。腕の中では雛森の体が震えている。切れそうな霊圧がその小柄な体から迸り、それはただ一人に向けられていた。
殺意を一身に受けているギンは、風に吹かれているかのように涼しげに笑っている。
日番谷の命が下され、乱菊は雛森を引きずるように連れて行く。ギンの前を通り過ぎるときに雛森が全てを込めた眼でギンを睨むのを感じ取り、乱菊は目をそらした。
何が起きているのか。
何が起きようとしているのか。
背後から血の臭いが漂ってくる。瀞霊廷がざわめいている。不穏な気配が周囲を支配する。
その中で一人だけ、ギンは異質なほどに飄々とした気配を発散している。
乱菊の奥底でざわざわと何かが騒ぎ出す。それはあまりに深いふかい場所で、常に飲み込んで隠してきたもので、乱菊はそれを表に出すことは許されない。ただひっそりと、乱菊は柳眉をひそめた。
06.乾いた瞳
卯ノ花がそこへ到着したとき、やちるはこちらに背を向けていた。その小さな体の向こうに血塗れの大きな体が横たわり、それを確認して卯ノ花は柳眉をひそめた。
「お待たせしました。草鹿さん」
声をかけ、やちるの隣に膝をつくと卯ノ花は動かない更木剣八に手を伸ばす。怪我の具合を確認し、細い息がまだあることにほうっと息をついた。肌は土気色だが、生気は失われていない。
「……ご安心下さい。更木隊長は大丈夫ですよ」
俯いてじっと剣八を見つめて動かないやちるに、卯ノ花は柔らかい声色で話しかける。
「傷が深くて出血は多いのですが、意識を失われているだけですから」
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02月05日(火)
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