ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■その先の5題01
 吉良は、ここまで来た喜びに、喉の奥をくっと鳴らす。そんな吉良を、市丸は常に浮かべている笑みを絶やすことなく眺めていた。
「まあボク元五番隊やし、勝手はわかるやろ」
「はい。市丸隊長と一緒に働くことができて、本当に光栄です」
 市丸は、ふっと表情を消した。
「本当に、本当に……光栄なんです」
 吉良の、しみじみと呟くような言葉に、市丸はまた笑みを浮かべた。しかしその笑みは常に口元にあるものではなく、吉良は、見たこともない市丸の柔らかい、しかし幽かに皮肉めいたその笑みを驚きを持って見ていた。普段から全く感情の読めない上司の、更に読めない笑みだった。





『嘘の約束』

「あら、市丸隊長……虚討伐、お疲れ様でした。ご無事で何よりです」
 急に現れたギンの気配に驚くこともなく、振り返った乱菊は血の染み一つない白い羽織姿に一礼した。頭を下げたときに、静かに息を付く。隊長クラスが出向かねばならない討伐に、さすがに乱菊は心配していた。
 顔を上げると、ギンは普段通りの、口元だけの笑みを浮かべている。乱菊はその奥の表情を読むことを諦めた。人通りのある廊下だ。ギンはきっと、この笑みを崩すことはしない。
「十番隊副隊長さんはどちらへ行きはるんや」
「一番隊への報告を終えて隊舎に戻るところです」
「ほな、これ、隊長さんへ持っていってくれはる?」
 手渡された書類に目を通し、乱菊はギンを振り仰いだ。
「虚討伐の報告書ですね。なぜこれを市丸隊長が? 吉良はどうしたんですか」
 ギンが面白そうに口の中で笑った。
「イヅル、ちょう怪我してもうて四番隊におるんよ。そやさかい、ボクが報告書作ったんやけどね。イヅル、えらい落ち込むわ謝るわやったのに、雛森ちゃんが見舞いに来たら途端に浮かれて、ボクが働いとることすっかり忘れとったわ」
「あらまあ、それならこちらが心配することないですね。軽傷ですか」
「軽いもんやけど、まあ顔見てやってくれはる? 面白いで」
「分かりました。後でお見舞いに参りましょう」
 おかしそうに笑っているギンに、乱菊は微笑んでそう言った。そして一礼して通り過ぎようとするその時に、ギンの、聞き逃しそうな声が乱菊に呟いた。
「ボク、怪我一つしとらんよ」
「……ええ。分かってる」
 遠い昔に約束したもの。
 怪我も、病気も、危険なことも、死ぬことも、全てしないで。
 ふっと背中の気配が消えて、乱菊は振り返ることなく隊舎へ向かった。
 この約束はどこまで本当なのだろう。ギンはどこまで守るつもりでいるのだろう。乱菊は、目を伏せる。











 これも時間も場所も人もばらばらの小話です。それぞれ、一度は書いてみたかった人達です。少し変更していますが、内容には変わりありません。
 追加:こちらの最後の話の「約束」とは、長編三番目の話のラストの会話に出てくるものです。まだ書いてもない話のことを書くのも微妙ですが、このように、ギン乱は長編が基本になっています。

02月02日(土)
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