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G*R
by K・カヲル
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■あなたがくれたものはわたしのすべてで
嬉しい。本当に嬉しい。
そしてほんの少しだけ寂しく思う自分を、奥へ奥へを追いやる。
これだけの日々を与えられておいて、それ以上何を求めるというのだろう。
この日々を、世界をもらっているのに。
でも、だからこそ寂しいのだ。
会えないことに。言葉を交わせないことに。
世界を与えてくれた、その喜びと感謝を伝えたいのに。
あなたに会えた喜びと感謝を伝えたいのに。
「もう、帰れ。もう今日やっても明日やっても同じだろう。今日くらい帰れ」
日も暮れた頃に、日番谷がそう言った。やっぱり、と乱菊はひっそり笑う。
「ありがとうございます。お言葉に甘えて帰ります」
「そうしろ」
乱菊が執務室を出るまで日番谷はしかめっ面のままで、それがおかしくて乱菊は隊舎を出たところでくすくすと笑う。そして、おいしいお酒でも買って帰ろうかと考えながら通りを歩きだした。
そこで、人影に気づいた。
「……市丸隊長、お疲れ様です。」
ギンが、風呂敷包みを手に向こうから歩いてきていた。歩みにあわせてカチカチと硝子のぶつかる音が微かにする。
「今、帰り? お疲れさん。十番隊副隊長さん」
人の往来がある通りだ。向かい合って立ち止り、乱菊は完璧に微笑んで会釈してみせた。ギンもいつも通りの薄っぺらな笑みを浮かべている。
「隊長さんは、まだ、いてはる?」
「はい、執務室に」
乱菊が先に立とうとすると、ギンは手をひらひらと振った。
「ええよ。副隊長さんはもう帰り。忙しいんやから帰れるときに帰らんとあかん」
薄い笑みの奥で、ギンが柔らかい目をしている。
「徹夜とかしてはるんやろ。今日くらいゆっくり眠らんとあかん」
二人の周りを死神達が頭を下げて通り過ぎる。それに軽く答えつつ、乱菊はギンを見上げていた。普段通りの声と仕草の奥に、ほんの僅かに、気遣わしげな気配があった。幼いころには直接示されていたギンの感情。乱菊が熱を出したり怪我をしたときの、懐かしい気配。
「……では、お言葉に甘えて」
乱菊がそう答えて微笑むと、ギンがほうっと息を吐いた。
「これ、お裾分けで持ってきたんや」
包みから瓶を取り出し、ギンが乱菊に差し出した。たぷんと音がする。
「梅酒」
「お手製ですか」
「初めてなんやけどな、なかなか良い出来やねん。何本もあるから、一本持って帰り」
「吉良から聞いていましたけど、本当に作られていたんですね」
「庭の梅に実がなっているんやもん」
たぷん、と手の中で音がする。
乱菊は微笑んだ。
「ごちそうさまです。いただきます」
「感想きかせてや」
ギンも小さく、柔らかに笑う。そして声を落として、
「この間、筆ありがとうなあ……おめでとうなあ」
と囁いた。
乱菊は首を振る。
「いいえ、こちらこそ」
見つめたまま、答える。
「本当にありがとうございます」
ギンは無言で、ただ笑う。
「……気ぃつけて帰り。よう寝るんやで。お疲れさん」
「はい、失礼致します」
ギンがくるりと背を向けて、手をひらひら振って門をくぐっていく。その背が扉の奥に消えるまで見送り、乱菊は一礼し、瓶を抱えて通りを歩きだす。たぷん、たぷんと一歩のたびに腕の中で音がして、乱菊は瓶の口にそっと頬を寄せた。
ちょっと早いのですが、2010年乱菊さん誕生祝いです。
01月19日(土)
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