ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■0910
 ギンはどこへも出かけずに仕事をこなしていた。ずっとソファに転がって、席官一同から贈られた茶を飲みつつ書類を片付けている。基本的に締め切りまでは放置されるために机上に堆積して山になっていた書類の殆どが、処理済みの箱に入っていた。この執務室の光景にどの席官も驚いて、次に窓から空の様子を確認しつつ、それらの書類を持って出ていく。
「市丸隊長」
 処理済みの書類を確認しつつ、吉良はしみじみと呟く。
「仕事がこれほど片づいた机は久しぶりに見たように思います、僕」
「……まあ、たまにはボクかて仕事せなあかんやろ」
 微妙に笑い、ギンは目を通していた報告書を脇机に置いた。それに吉良が手を伸ばし、枚数を数えてはまとめていく。
「せやけど、もう飽いた」
「もう少しです。もう少しで書類が全て処理済みになります」
 吉良が新たな書類を渡すと、ギンが不満の声をあげる。
「これ、締め切りまだまだやないの」
「終わらせておいた方がいいんですこういうものは」
「焦っとると髪のうなるで」
「お言葉ですが僕の額はまだまだ広がる気配もありません」
「額から始まると限っとらんよ」
「頭頂部も無事ですし、髪を洗うたびに流しが詰まるということもありませんのでご心配なく」
「うわ、具体的やな」
「いいからさっさとやってください。どうせもう少しで終業時刻なんですから」
 やりとりをばっさりと終わらせて、吉良はギンを急かす。ギンは不満そうにソファにもたれかかったが、ふと顔を上げて扉の方を見やった。
 軽く扉を叩く音がした。
「十番隊の松本です……ごめん、吉良、開けてくれる?」
「あ、松本さん」
 吉良が慌てて扉を開けると、乱菊が荷物を抱えてそこに立っていた。そのまま、乱菊は一礼する。
「このような姿で失礼致します、市丸隊長」
「お久しぶりですなあ、十番隊副隊長さん」
 片手を上げてへらりと笑い、ギンは乱菊を眺めた。乱菊はすぐに吉良を振り向くと、荷物の中から袋を差し出す。
「吉良、これなんだけど三番隊じゃないかしら」
「あ、そうですそうです。どうしてこれが十番隊に?」
「壁の修理のために大工道具探していたら出てきたのよ」
 苦笑いをして乱菊が言った。
「誰かが借りたのか、そちらが持ってきたのかわからないんだけど、それにしてもずっと置きっぱなしだったみたいで。急いで持ってきたんだけど、ごめんね」
「いえ、全然知りませんでしたし。申し訳ありません」
 吉良がそう言って受け取ると、乱菊はギンに向き直り、深くお辞儀をした。
「市丸隊長、三番隊の大工道具をずっとお借りしていたようでした。申し訳ありませんでした」
「ええって、そんなん。ボク知らんかったしなあ。ボクより前の頃の話やないの」
「そうかもしれませんが……こちらは、十番隊からお詫びです」
 乱菊はもう一つの紙袋から、綺麗に包装された箱を取り出した。それを差し出されてギンは受け取ると、包装紙に書かれた店名を見て笑みを浮かべた。そして吉良を見上げる。
「お茶しよか、イヅル」
「あ、はい。松本さんも大丈夫ですよね」
 乱菊は少し困ったように笑った。
「ごめん、まだ壁の修繕が終わってないのよ。戻らないといけないから、遠慮するわ」
 そう言って首を傾げて謝る仕草をしてみせる乱菊は綻び一つない綺麗な笑みを浮かべていて、吉良は少しだけぼんやりとし、すぐに背筋を伸ばした。
「あたし、すぐに出ていくから、気にしないでお茶を淹れておいで。ありがとね、吉良」
 空になった紙袋を畳みながら、乱菊は微笑む。その前でギンがにぃと笑った。
「そうやねえ、ならお茶頼むなあ、イヅル」
「はい、分かりました。じゃあ松本さん、失礼します」
 吉良は一礼して、隣の席官部屋へ続く扉を開ける。すり抜けて、扉を閉めるときに、何やら会話する二人の姿が見えた。珍しいな、と吉良はふと思い、すぐに忘れた。


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01月11日(金)
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