ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■10. 一雫の涙
 こんなことをする理由も、これから学院でやっと安全な生活ができるというのに、自分との過去を捨てろという本当の理由も、何も説明することもなくギンは乱菊の背で熱い雫をこぼしている。もしかしたら泣いていないのかもしれない。ただ汗が滴っているだけなのかもしれない。しかし、乱菊はこのかすかに伝わる震えを無視することはできなかった。
「……ギン」
 掠れた声でギンを呼ぶ。ギンは顔を上げて、頬をよせてきた。その頬は濡れていて、ひたりと乱菊の頬にくっついた。昔からずっと繰り返してきた二人の行為なのに、ギンの頬が濡れていたのは初めてのことだった。ああ、ほら。ほら、やっぱりそうじゃないの。乱菊は固く眼を閉じた。


 ギンが泣いたところを乱菊は見たことがない。
 ただ一度だけ、背中でその雫が滴るのを感じたことがあるだけだ。そのときのギンの嘘を乱菊は何も訊かずに受け止めた。
 その嘘と、それにまつわる出来事がこれからの二人の未来を決めたことを乱菊が知るのは、もっとずっと後のことだった。








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01月10日(水)
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