ID:104863
G*R
by K・カヲル
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■ぼくらはただそうやって世界を手にした 5
「霊力持ちかよ。なら、迎えに行った奴らはやられちゃったかな」
「アンタがいて良かったよ。厄介だよな、霊力があると」
「俺がこいつを押さえ込んでやるから、その間に、いろいろと楽しもうぜ。そのあと売り飛ばそう。高く売れるぜ、このガキ」
床にへたりこんだ乱菊を見下ろして、ぎらぎらとした男達が話している。ここで怖がっちゃだめだ。思うつぼだ。そう思うのに、以前のことを思い出して乱菊は体が震え出すのを抑えられずにいた。そうか、ここの人達を先に襲っていたのか。そういえばそんなことを言っていたような気がする。
ああ、ギンはどうしただろう。ここに来てはダメだ。ここには四人もいる。あの男の霊圧はギンよりも弱いように思うけれど、先程ギンは何度も放出してしまっているし、まだ他の家にも仲間がいるかもしれない。乱菊は必死に思う。自分が全力の霊圧を出せば、こいつの霊圧を跳ね返せる。震えるな。逃げないと。
「かわいい顔してるじゃねえか。色も白いぜ。こんな場所に住んでるのに」
霊力のある男が霊圧で乱菊を押し潰しながら、着物の袷から手を差し込んで肩を露わにすると、その白い肌を撫でた。ねっとりとした感触に総毛立ち、乱菊は一瞬、恐怖に囚われた。乱菊の唇から小さく悲鳴が漏れる。
そのとき。
すごい速さで近づいてくるギンの霊圧を感じた。
極力押し隠しているけれど、これは間違いなくギンの、慣れ親しんだ霊圧だ。感じた瞬間、泣きそうになったけれど、略奪者が四人もいることを乱菊は思い出す。
「来ないで! ギン! チカラのある奴がいるの!」
乱菊が叫ぶと同時に、ギンが開け放たれた扉に現れた。いつもはさらさらの銀髪が乱れている。頬に殴られた痕がある。右手にいくつもの傷がある。いつも飄々と笑っている顔が無表情になっていたが、乱菊の方を見ると、乱菊の、男に押さえつけられた細く白い肩を見ると、いつもは笑っているかのように細い眼がすっと開いた。
血の色をしていた。
「来んな言うても無理や、乱菊」
低い、低い声で言うと、ギンは身を屈めた。
「潰すぞ、おんどれら」
爆発が起きたような音がした。
ものすごい圧力の霊圧がギンから迸る。乱菊は息を詰めたが、強風のようなそれは乱菊を避けて男達に向かっていった。霊力のない男達はみな飛ばされて壁に叩きつけられ、霊力のある男は飛ばされこそしなかったがその圧力に床に蛙のように這い蹲っている。その顔色は蒼白だ。
狭い家の中にギンの霊圧が溢れかえり、暴れ回る。どこにこんなものを隠していたのだろう。乱菊は、ギンの初めて見る姿に言葉を失っていた。こんなに強かったのか。こんなにすごかったのか。鋭くて、触れると切れそうな霊圧が渦巻き、壁や屋根が、堪えきれずにびりびりと震えて音を立てている。
「眼ェ瞑って下がっとき、乱菊。遅れて堪忍な」
男達を射るような眼で見ていたギンが、ちらりとこちらを見た。乱菊に向けられる眼は柔らかく、鮮やかな緋色が僅かに曇る。それを見て乱菊はギンの心を知った。ギンは、乱菊を心配して走ってきたのだ。ギンは乱菊が傷つけられているのを見て怒っているのだ。溢れ出すこの恐ろしいほどの殺意は、乱菊のためだ。
乱菊はへたりこんだまま目を見開いたまま、それでも後ずさりして部屋の角に下がった。乱菊が下がったことを確認して「眼ェ瞑っとき」と静かな声で言うと、ギンは霊圧を放出したまま右手に霊圧を集める。それはもう色を帯び形をつくり、ゆらゆらと揺らめく刀のようになっていた。右手からのびるそれを従えて、ギンは一歩前に足を踏み出した。血溜まりが揺れて、ぴしゃんと音がする。
「おばさん……なら、おっさん達もやな」
ギンは女の死体を見て、軽く眉を顰めた。親切な女だったと思う。胃のあたりがじりりと焼ける。ギンは思う。自分も簡単に人を殺してきた。何人殺したか覚えていないくらいに殺した。けれど、こういう女は殺さなかった。弱く、お人好しで、おそらく抵抗すらしないだろうこんな女は。自分達に分け与えて、多分、奪われるような物は何も持っていなかったはずなのに。
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01月10日(月)
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